法人成りにかかる税務講座シリーズ第4回《個人課税と法人課税の違い》Column

  vol.0099
ラボン博士

今回は、個人事業主のときと法人化したときの課税関係について、税の仕組みや課税所得の計算方法等の違いについて解説しよう。


1.税法の違い

法人化を検討する際に最も重要なのが税金関係の把握じゃ。個人事業を行っているときの所得税は、課税所得が増加すると税率が上昇する「累進課税」制度じゃ。検討するのは、この個人事業の課税所得に対応した税率と、法人化によって法人税率を適用した場合の税額負担を比べることじゃ。このときに忘れてはならないのが、地方税の存在じゃ。税金と言うと、ともすれば所得税と法人税という国税ばかりに目が行きがちじゃが、普段はあまり目立たない地方税にこそ落とし穴が隠されておる。このため、税金を考えるときは、会社に関する税の仕組みを大掴みにすることが重要じゃ


法人化を考えるきっかけは、節税を意識し出したときじゃな。個人事業が順調で、ビジネスとしての成功が見込まれるようになると、俄然、税金が気になりだすからじゃ。売上高が一定の水準に達すると、税金の負担感が増してくるが、目分量や感覚で捉えるのではなく、地方税を含めた税率、課税の仕組み、そして、売上高の規模によっては消費税の申告・納税も想定して判断しなければならない。まずは、個人事業における所得と法人化によって支払われる給与について整理しておこう。


(表1)個人事業における所得と法人における給与の取扱い

区分 内容
個人事業における所得の税法上の取扱い 個人事業主の場合、事業収入から経費を差し引いた金額は全額個人の課税所得となる。所得税法上これは事業所得であり、給与とはまったく別物だということを理解する必要がある。また、家族に支給する給与は、「専従者給与」として認められ、経費に算入することができるが、支給する金額は予め税務署に届け出ておかねばならず、事業に専従する期間(6カ月)の要件を満たさなければならない。また、専従者とした場合は、その家族を経営者の配偶者控除や扶養控除の対象とはできず、税制面では特に有利とはいえない点にも留意しよう。
法人から経営者や従業員に支払われる給与の取扱い 法人の場合、収益から経費を差し引いた所得は、当然法人の課税所得として法人税の課税対象となる。法人から経営者に対しては給与を支給することになるが、これは所定の要件を満たせば全て損金(税務上の費用)として認めてもらえるため、法人の課税所得を減らす働きがある。
経営者や従業員が法人から受け取る給与の性質 経営者や家族従業員及びその他の従業員が受け取った給与は、所得税法上の給与所得となる。給与所得は、経費相当分として「給与所得控除」を受けることができるため、その分だけ課税所得が少なくなる。

2.法人化した際に課税される税金の種類

法人化すると、法人税と法人税にかかる地方税以外に実に様々な税金がかかることになる。税金自体は、国税と地方税があるが、課税のタイミングで見ると、毎事業年度課税されるものと、特定の取引を行った際に課税されるものに分けられる。事業年度ごとに課税される税金は、法人税、法人住民税、法人事業税、地方法人税・特別法人事業税、消費税、固定資産税・都市計画税、自動車税などがある。以下、各税金について解説する。


2-1.法人税

法人税は、各年度の法人の所得金額に対して課税され、資本金が1億円以下の法人の場合は、年800万円以下の部分について15%(適用除外事業者は19%)、800万円を超える部分については23.2%となっている。その期の所得が500万円なら法人税は75万円、1,000万円なら166.4万円(800万円×15%+200万円×23.2%)という計算じゃ。また、この法人税額の10.3%が地方法人税として加算されることになる。


2-2.地方法人税

名前は地方税となっておるが、実態は国税なのじゃ。地方財政の不均衡を緩和する目的で2014年10月1日に創設されたもので、国が法人税と合わせて徴収し、その全額が地方交付税の原資となっておる(国から地方に配られる)。現在の税率は10.3%(改正前は4.4%)で、この税率は2019年10月1日以後に開始する事業年度から適用されている。


2-3.法人住民税

法人住民税は地方税で、「都道府県民税」と「市町村民税」があり、それぞれ「法人税割」と「均等割」が課される。「均等割」は、事業所の数や従業員数で計算されるので、事業が赤字であっても課税される点に注意じゃ。この税は、当期の法人税額に対して課税されるもので、税率は、道府県民税4.0%(軽減税率3.2%)、市町村民税(自治体によって若干異なります)となっておる。


2-4.法人事業税

根税は、各自治体の公共施設(道路・港湾)や公共サービス(警察や消防など)は、個人に限らず法人も利用していることに着目した税で、これら公共施設等の利用料として考えると分かりやすい。


2-5.特別法人事業税

これは2019年度の税制改正で創設された国税じゃ。この税が創設されたことで、2008年10月から2019年9月までの暫定措置として設けられていた「地方法人特別税」が廃止された。したがって、2019年10月1日以後に開始する事業年度から適用されており、対象は、法人事業税(所得割・収入割)の納税義務のある法人で、法人事業税と併せて都道府県に申告納付しなければならない税じゃ。税額の計算は、法人の事業税額(所得割額・収入割額)×税率で計算されるが、その適用税率は以下の通りじゃ。


(表2)特別法人事業税の概要

課税標準 法人の種類 税率
基準法人所得割額 外形標準課税法人・特別法人以外の法人 37%
外形標準課税法人 260%
特別法人 34.5%
基準法人収入割額 - 30%

2-6.消費税

消費税は、国税と地方税があるほか、消費税の対象となる取引と対象外の取引の区別や、仮受消費税及び仮払消費税に係る税率を管理しておかないと、決算事務や消費税の申告が円滑に進まないため、期中での管理が非常に重要になる税金じゃ。


実際の消費税管理においては、会計ソフトを使用すれば大きな間違いはないと考えられるが、消費税の仕組みと納税までの流れを理解していないと、万一間違った処理をしていたとしても、その間違いを見つけることができないため、税の仕組みを学習しておく必要がある。


消費税の申告・納税の義務がある課税事業者となるかどうかについては、新設法人の場合は、制度上、課税事業者を判定するための基準期間(前々事業年度)がないため、創設期の課税売上高が消費税課税事業者の基準となる1,000万円を超えている場合であっても、2年間は消費税の免税事業者となる。


しかし、資本金1,000万円以上の会社や、資本金基準を満たさない会社であっても、その会社の50%を超える株式を保有する支配株主が存在するような新規設立法人については、申告義務が生じるということを押さえておかなければならない。


また、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の場合は、簡易課税制度を選択することができ、この場合、下表の「みなし仕入率」を使用した簡便な方法で消費税の計算を行うことができるのじゃ。


(表3)消費税の原則課税方式と簡易課税方式

課税の方式 消費税額の算出方法
原則課税方式 課税売上高が5億円以下かつ課税売上割合が95%以上 課税売上高×10%-課税仕入高×10%
課税売上高が5億円超または課税売上割合が95%未満 一括比例配分方式 課税売上高×10%-課税仕入高×10%×課税売上割合
個別対応方式 課税売上高×10%-(ア+イ) ア.課税売上だけに関係する消費税額 イ.課税売上、非課税売上げともに関係する消費税額×課税売上割合
簡易課税方式 第1種事業(卸売業) 課税売上高×10%-(課税売上高×10%×90%)
第2種事業(小売業) 課税売上高×10%-( 〃   ×10%×80%)
第3種事業(農林業、建設業、製造業等) 課税売上高×10%-( 〃   ×10%×70%)
第4種事業(飲食店) 課税売上高×10%-( 〃   ×10%×60%)
第5種事業(金融・保険業) 課税売上高×10%-( 〃   ×10%×50%)
第6種事業(不動産業) 課税売上高×10%-( 〃   ×10%×40%)

なお、消費税の場合、「課税所得」ではなく「課税売上高」が基本となる点が特徴的じゃ。消費税の課税売上高は、消費税の対象から外れる不課税取引と課税対象外取引を除外した売上高の合計額となるため、非課税取引と不課税取引の違いを知っておくことも管理上重要なポイントとなる。


(表4)非課税取引・不課税取引

非課税取引=消費税の性格になじまない取引 不課税取引:消費税制度の対象外
1)土地の貸付け・譲渡等 2)有価証券等現金同等物の譲渡 3)保険料、共済掛金、保証料、利子等 4)収入印紙、証紙、商品券などの譲渡 5)登記、登録、免許、住民票等の交付手数料 6)外国為替、国債郵便為替など 1)社会保険、医療(保険診療) 2)社会福祉事業等 3)埋葬料、火葬料、お産費用等 4)身体障害者物品の譲渡等 5)入学金、教科書の譲渡等 6)住宅の貸付け

このほかの毎年課税される税金である固定資産税・都市計画税と特定の取引によって生じる税金(印紙税、登録免許税、不動産取得税等)については、次回解説する。


3.まとめ

法人化することによって課税される税金の種類が増えることは分かったと思う。実務上厄介な存在となるのは、各種地方税と国税と地方税が混在する消費税じゃ。法人税(国税)は自ら申告する仕組みで、しかも最も税額が大きくなるものじゃから意識はするが、地方税は納税通知が届けられるという特性から、納付を失念して納付期限を過ぎてしまうことが多い。


そうなると、延滞税が発生するなど面倒なことになるので、顧問税理士のいる会社では、定期的な訪問時に、前年対比で帳簿のチェック等をしてくれるので、納付漏れが防げたりする。顧問税理士がいないようなら、税理士紹介会社へ相談することをお奨めする。会社規模の大小にかかわらず顧問税理士は必要じゃ。


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