法人の経理の画像

今回から、法人化した場合の経費の取扱いについて見ていこう。まずは、個人事業主から法人の役員になるという重要な事実に鑑み、役員給与の取扱いからはじめ、減価償却費について解説する。また、法人ならではの取扱いが必要となる「交際費」や「引当金」といった費用科目については、次回(第8回)で解説をする。

1、役員給与の取扱い上の注意

役員給与の取扱いについては、別の講座でも取り上げてきたので、「何となく聞いたことがあるな」という部分が出てくるはずじゃ。記憶を整理しながら読み進めれば理解が進むじゃろ。役員給与については、従前は、法人税法上、「役員報酬」、「役員賞与」、「役員退職給与」に区分して取り扱っていたものが、2006年度の税制改正によって、「報酬」と「賞与」を一括りにして規定し直されたのじゃ。

1-1、役員給与を損金算入するためには

この役員給与が問題になるのは、法人税法上の「損金」として算入できるか否かについてじゃ。役員給与は金額が大きいため、損金に算入できないと会計上の費用は増加するのに課税所得は減らない(税金が多くなる)と言う厄介な代物じゃ。損金算入するためには、次の要件に該当するものでなければならない。

(表1-1)損金算入できる役員給与とは

役員給与の態様 内容
(1)定期同額給与 支給期間が1か月以下の一定期間ごとで、1事業年度内の各支給時期における支給額が同額である給与を言う。毎月同額支払いが要件となり、月によって金額が変動するものは損金に算入できない。
(2)事前確定届出給与 所定の時期に確定額を支給するという機関決定に基づいて支給する給与で、予め市の定めの内容を税務署に届け出ておく必要がある。例えば、6月と12月に各500万円を給与として支払うことにする場合、その内容を株主総会若しくは取締役会で決議した上で税務署に届け出るということじゃ。
(3)業績連動給与 同族会社に該当しない法人が、業務執行を担う役員に対して、利益に関する指標を基礎として算定し支給するという定めに基づいて支給する給与。有価証券報告書に予めその決定内容が記載されていなければならないというもの。

1-2、過大な役員給与の損金不算入

上記の基本的な要件のほかに、次のような場合は損金算入が認められておらんのじゃ。

(表1-2)その他損金不算入となる場合

(1)次のうちいずれか多い額(ただし、退職給与の除く)
・職務の内容、会社の収益、使用人(従業員)に対する休養の支払状況、事業規模の類似する同業他社の役員給与の支給状況に照らし、相当と認められる額を超える部分の額(一言で言うと、社会通念上、「それはちょっとおかしいだろ?」という状況)。
・定款の規定、株主総会等により決議された役員給与の限度額等を超える部分の額。(2)退職給与のうち不相当に高額と認められる金額
事業に従事した期間、退職の事情、事業規模の類似する同業他社の退職給与の支給状況に照らし、相当と認められる額を超える部分の額。(3)使用人兼務役員の使用人としての職務に対する賞与で、他の使用人に対する賞与の支給時期と異なる時期に支給したものの額。

役員給与についてはこのような損金算入要件があるので、個人事業の延長で考えてお手盛りみたいなことをやっていると、会計上の費用が膨らんで損益は悪化するわ、課税所得が増加して法人税はたくさん取られるわ、まさに踏んだり蹴ったりの状況に陥ってしまうぞ。役員給与を決めるときは、顧問税理士のアドバイスももらいながら、適法かつ適切な額となるよう注意が必要じゃ。

2、減価償却費

減価償却費という費用の話しをする前に、まずは減価償却資産の定義から整理しておこう。

2-1、減価償却資産の定義

減価償却資産と言うのは、「棚卸資産」、「有価証券」、「繰延資産」以外の資産のうち次に掲げるものをいうのじゃ。

(表2) 減価償却資産

1)建物、2)建物付属設備、3)構築物、4)機械及び装置、5)船舶、6)航空機、7)車両運搬具、8)工具・器具及び備品、9)特許権等の無形減価償却資産、10)生物
【注意】
・書画骨董などのように、時の経過や使用によって価値が減少しないものは減価償却資産に該当しない(会計上は固定資産として固定資産台帳に掲載しておかなければならない)。
・施設や機械等で稼働を休止しているもの、また、建設途中で事業の用に供していない資産は減価償却資産には該当しない。ただし、稼働を休止している資産であっても、休止している期間中に必要な維持管理並びに補修等が行われ、いつでも稼働できる状態にあるものは減価償却資産に該当するので注意が必要じゃ。

2-2、減価償却費の計算

当該の事業年度において減価償却費として損金経理した金額のうち、各資産に認められた法定の償却方法で計算した額(償却限度額まで)を、その事業年度の課税所得を計算する際の損金の額に算入することができる。

2-2、償却方法

償却限度額までの計算を行うために、選定できる償却方法には「定率法」と「定額法」がある。減価償却資産の種類によって、どの償却方法とするかは税法上決められていて、この法定償却方法以外の方法を選ぶ場合には、予め所定の期日までに所轄税務署長宛て減価償却資産の償却方法の届出をしなければならないのじゃ。

(表2)の4)~8)については定率法が法定の償却方法となる(定額法を採用するときは届出が必要)。同表の1)~3)及び9)~10)は定額法で、2)と3)は、2016年4月1日以降に取得する資産から定率法の選択ができなくなっておるので注意が必要じゃ。
鉱業用の減価償却資産については、このほかに「生産高比例法(法定償却方法)」があり、定額法を選択することもできる(届出)。また、営業権については、5年間の均等償却じゃ。

2-3、耐用年数

減価償却資産は、資産の種類、構造、用途等によって耐用年数(償却年数)が決められておる。これは、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令別表」というのに規定されており、法定耐用年数と呼ばれる。なお、2008年度の税制改正において、機械装置を中心にこの耐用年数の改定が行われ、2008年4月1日以降に開始する事業年度から適用されておる。注意が必要なのは、この改定の適用は、新たに取得した資産だけではなく、そのときまでに取得している資産いついても適用されることじゃ。

法人化によって設立した法人が、個人事業のときから事業用に使ってきた車両運搬具や機械装置等を法人が引き継いだ場合、これらは全て中古資産として扱われることになる。中古資産の耐用年数は、法定耐用年数を使用するのではなく、取得後の「使用可能」と見積もられる年数を使用することに注意が必要じゃ。なお、この使用可能年数による見積りは、次の通り簡便法による計算方法が認められておる。なお、この計算によって出された年数に1年未満の端数があるときは切り捨て、2年に持たない場合は2年となる。

(1)法定耐用年数の全部が経過しているもの・・・法定耐用年数×0.2
(2)法定耐用年数の一部が経過しているもの・・・(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×0.2

2-4、少額の減価償却資産の取得価額の損金算入

少額資産の特例措置という制度があり、これは毎年見直される租税特別措置法で決められるのじゃが、2020年度改正で、従来の措置の適用期限を2年間延長することが決まっておる。その内容は次の通りじゃ。

(表3)少額減価償却資産の特例の内容

中小企業者等が30万円未満の減価償却資産を取得した場合、合計300万円までを限度に、即時償却(全額損金算入)することが可能な特例措置。なお、2020年度の改正においては、この制度の適用対象から、連結納税制度適用事業者及び従業員500人超の法人が除外されることになっておる。その他の少額減価償却資産の特例を含めた税制措置は次のとおり。

取得価額 償却方法 備考
中小企業者等 30万円未満 全額損金に算入可(即時償却) 合計300万円に達するまで
全ての企業※ 20万円未満 3年間で均等償却(残存価額ゼロ) この部分は、法人税法本則で認められている内容
10万円未満 全額損金算入(即時償却)

※10万円以上20万円未満の減価償却資産は、事業年度ごとに一括して3か年で毎年3分の1ずつ均等償却して損金算入することができる。

3、減価償却に関する所得税法と法人税法の違い

個人事業の場合は、利益操作を排除するために、個人事業主者が減価償却費を計上していなくても、その資産が事業の用に供されていれば、個人事業者が選定した償却方法で減価償却費を必要経費に算入しなければならない。このため、償却方法を選定していない場合は、所得税法における法定償却方法(定額法)によって強制償却することになるのじゃ。

法人の場合、減価償却費を計上するか否かは法人の任意とされていて、法人が自ら意思決定を行うことになるのじゃ。このため、法人に利益が出ていない場合などは減価償却費を計上しないという芸当もできるわけじゃが、これは、会計上よろしくないし、何よりも、金融機関からの融資を受ける際に不利な材料となってしまう。

中小規模の法人で、過去5年間程度の財務諸表を並べると、どこかの年度で突然減価償却費がゼロになって、その翌年度にまた突然減価償却費が復活するなんてことも実際に存在するが、金融機関だけではなく、取引先からも信用されなくなるので、これはやめておいたほうがよい。

4、まとめ

法人化した場合、役員給与はかなり微妙な部分もあるので、顧問税理士と相談しながら決めるのがベストじゃ。減価償却についても、税務署への届出等を意識しなければならないので、万全を期す意味でも顧問税理士の存在が必要になる。顧問税理士を探すときは、税理士紹介会社に相談し、自分の将来の思いも伝えて、自分の夢の実現をサポートしてくれる税理士を選ぶことが重要じゃ。

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