収益認識会計基準の画像

今回も引き続き「個別に整理が必要な事項(論点)」について解説する。企業が行う取引が「本人取引」か「代理人取引」かによって取り扱いがことなるので、取引の当事者の違いによる会計処理と税法上の取扱いから見ていくことにする。

1、取引の当事者は誰なのか

収益認識会計基準が導入される前の会計基準では、ソフトウエアを除き、収益に関して売上と仕入を「総額」で表示するか「純額」で表示するかの定めはなかった。

収益認識会計基準では、他の当事者が顧客への財またサービスの提供に関与している場合は、企業は、自ら財またはサービスを提供することが役割なのか、あるいは、その財またはサービスが他の当事者(代理人)によって提供されるように手配することなのかを判断しなければならないのじゃ(本人が直接取引を行うのか、代理人に行わせるのかということ)。

1-1、当事者の違いによる収益表示の違い

企業が顧客との契約による財またはサービスの履行義務を負っていると判断される場合は、その財またはサービスの提供と交換に企業が権利を得ると見込む対価の総額(簡単に言えば、商品を販売して得られる金額)を収益として認識することになる。

かたや、顧客との約束が財またはサービスを他の当事者によって提供されるように手配する履行義務であると判断され、その企業が代理人に該当するときは、手数料部分を純額で収益に計上することとされておるのじゃ。よって、企業は、自らが本人であるのか代理人であるのかを、顧客に約束した特定された財またはサービスのそれぞれについて判断しなければならないのじゃ。

1-2、取引の主体を判断する手順

本人取引か代理人取引かを判断するには、次の(1)及び(2)の手順に従って判断することになる。

(表1)本人取引か代理人取引かの判断手順

(1)顧客に提供する財またはサービスを識別すること(自らが直接顧客に対して財またサービスを提供するのか他の企業等に行わせるのかを明確にする)。

(2)財またはサービスのそれぞれが顧客に提供される前に、その財またはサービスを自らが支配しているか否かを判断すること。

財またはサービスを顧客に移転する前に、その財またはサービスを自らが支配しているか否かを判断し、顧客に移転する前に自らが支配している場合には、それは本人取引といえるが、財の法的所有権を瞬間的にしか獲得していない場合は、必ずしもその財を支配していないと判断される。

たとえば、売上が計上されると同時に仕入れを計上する取引は、原則として代理人取引と判断される。この財またはサービスを顧客に提供する前の支配の状態を判定することが重要なポイントなのじゃが、このとき、判定に当たっては、次の(1)~(3)の指標を考慮することになる。

(表2)顧客提供前の支配関係の判定指標

(1)企業が、その財またはサービスを提供するという約束を履行することについて主たる責任を負っていること。

(2)その財またはサービスが顧客に提供される前、あるいは、その財またはサービスに対する支配が顧客に移転した後において、企業自らが在庫リスクを負っていること(顧客に返品権がある場合)。

(3)その財またはサービスの価格の設定において企業が裁量権を有していること(代理人が価格設定における裁量権を有している場合があるため)。

1-3、税法上の取扱い

前述のとおり、企業自らが財またはサービスを提供することが役割なのか、あるいは、その財またはサービスが他の当事者(代理人)によって提供されるように手配することなのかによって、「総額表示」か「純額表示」の判断がされるが、この表示法が変わっても課税所得に変化はなく、また、本人取引か代理人取引であるかによって、履行義務を充足するタイミングも変わらないため、法人税法上は特別な対応をする必要がない。このため、会計処理がそのまま認容されることになる。

2.有償支給取引の取扱い

企業が、対価と引き換えに原材料等(これを支給品と言う)を外部(支給先)に譲渡し、支給先において加工後、その支給先からその支給品(加工された製品に組み込まれたものを含む)を購入する場合があるが、この一連の取引を、「有償支給取引」と呼んでいる。

このような取引においては、企業から支給先へ支給品が譲渡された後の取引や契約の形態は多様であるため、会計上、企業がその支給品を「買い戻す義務」を有しているか否かを判断する必要があるのじゃ。支給先によって、加工された製品の全量を買い戻すことを支給品の譲渡時に約束している場合には、企業はその支給品を買い戻す義務を負っていると考えられるが、その他の場合は、支給品を買い戻す義務を負っているか否かを、取引の実態に応じて判断する必要があるのじゃ。

2-1、支給品を買い戻す義務がない場合

有償支給取引において、企業が支給品を買い戻す義務を負っていない場合は、企業はその支給品の「消滅」を認識(会計上は棚卸資産に貸方を立てて残高を帳簿から消す)することになるが、支給品を譲渡したときの収益と最終的な製品の販売の収益が二重計上されることのないよう支給品の譲渡による収益は認識しないことに注意じゃ。

この場合の取引例は次の通りじゃ。

(表3)

【設例】

有償取引の支給元である「甲社」は、支給先である「乙社」に対して支給品を販売した。この契約においては、加工後の製品の買戻し義務を伴わない内容としており、甲社は買戻し義務を負っていない。

したがって、支給品の在庫リスクは乙社がおっており、乙社は甲社以外にも、加工後の製品を販売している。このため、甲社から乙社に販売した時点で、「支給品の支配」は甲社から乙社に移転すると判断できる。

この契約のもとで、甲社は、甲社が製造した部品(帳簿価額500千円)を乙社に700千円で有償支給し、加工後の製品を1,000千円で乙社から購入した。

《甲社の会計処理(仕訳)》

1.乙社への部品の支給に係る仕訳

借方 勘定科目 貸方
700,000 未収入金
棚卸資産 500,000
有償支給取引負債 200,000

※棚卸資産は貸方に立てることで帳簿残高をゼロとし、貸借差額は負債として認識する。棚卸資産が減少する場合は、相手方勘定は売上だが、有償支給取引の場合はこのような仕訳となる。

2.加工後の製品を購入したときの仕訳

借方 勘定科目 貸方
800,000 棚卸資産
200,000 有償支給取引負債
買掛金 1,000,000

※製品の購入代金1,000千円と負債200千円の差額を棚卸資産として認識し、営業債務の発生を買掛金として計上する。

3.乙社に対する債務の支払時の仕訳

借方 勘定科目 貸方
1,000,000 買掛金
現預金 1,000,000

4.部品の有償支給に係る債権回収時(乙社からの回収)の仕訳

借方 勘定科目 貸方
700,000 現預金
未収入金 700,000

5.支給品加工後の製品が販売された場合の仕訳

借方 勘定科目 貸方
200,000 有償支給取引負債
支給品譲渡収益 200,000

2-2、支給品を買い戻す義務がある場合

支給品を買い戻す義務がある場合

有償支給取引で、企業が支給品を買い戻す義務を負っている場合は、支給先がその支給品に対する権益を制限されているため、支給先は支給品に対する支配を取得していないことになる。この場合は、基本的には支給品の譲渡に係る収益を認識せず、支給品の消滅(棚卸資産から消すこと)を認識しないことになる。帳簿残高はそのままと言うことじゃ。

ただ、この支給品は現実には支給先で在庫管理が行われることになり、在庫管理の面で混乱する可能性があるため、個別財務諸表においては、支給品譲渡時に棚卸資産をゼロにすることが認められることになったのじゃが、前述した収益の二重計上を避けるため、支給品の譲渡に係る収益は認識しないこととされておるのじゃ。

なお、買い戻す義務のある場合の有償支給取引の仕訳は次のとおりじゃ。

(表4)

【設例】

有償取引の支給元である「甲社」は、支給先である「乙社」と製品の購入契約を締結した。甲社は本契約に基づいて、甲社が製造した部品を乙社に有償で支給し、加工後の製品を乙社から購入する。この場合、甲社には、乙社に対して部品を有償支給した時点で法的債権が発生し、乙社には法的債務が発生することになる。

甲社は、乙社が加工した製品の買戻し義務を負っており、乙社は、この支給部品の使用を指図する能力や、支給部品から残りの便益を享受する能力が制限されているため、この部品に対する支配を取得していないと判断できる。

この契約のもとで、甲社は、甲社が製造した部品(帳簿価額1,000千円)を乙社に1,500千円で有償支給し、加工後の製品を2,000千円で乙社から購入した。

《甲社の会計処理(仕訳)》

1.乙社への部品の支給に係る仕訳

借方 勘定科目 貸方
1,500,000 未収入金
有償支給取引負債 1,500,000

※部品の有償支給により生じた乙社に対する法的な債権を未収入金とし、加工後の製品に対する支払い義務に含まれる部品相当額を負債と認識する。部品の帳簿価額1,000千円は、支配が乙社に移転しないため、甲社の棚卸資産として引き続き存在(認識)することになる。

2.加工後の製品を購入したときの仕訳

借方 勘定科目 貸方
500,000 棚卸資産
1,500,000 有償支給取引負債
買掛金 2,000,000

※乙社の加工による増加部分500千円のみを棚卸資産として認識する。また、有償支給取引に係る負債の消滅を認識したうえで、営業債務の発生を買掛金として計上する。

3.乙社に対する債務の支払時の仕訳

借方 勘定科目 貸方
2,000,000 買掛金
現預金 2,000,000

4.部品の有償支給に係る債権回収時の仕訳

借方 勘定科目 貸方
1,500,000 現預金
未収入金 1,500,000

3、まとめ

言葉で表すとややこしい会計処理じゃが、勘定科目に当てはめてみるとそうでもない。ただ、財が行ったり来たりする間に数字が置き換わっていくため混乱するかもしれない。このあたりの絡まった糸は、顧問税理士に解いてもらうのがよい。

顧問税理士がいないようなら、早めに税理士紹介会社に相談したほうがよい。会計制度は、今後も変貌していくので、適時的確に対応するためには税理士の力が必要じゃ。

税理士紹介ラボのバナー