目次
税務調査の基礎知識と対象になりやすい例
今回は世界の税金に目を向けてみようと思う。まずは世界の変わった税金を紹介して、それから同じ目的の税で日本と世界を比べてみようと思う。日本の税金とどんな違いがあるか楽しみじゃな。
1、世界の風変わりな税金
日本の税金にも地方税を中心に変わった税金が沢山あるが、海外には日本では想像もつかないような変わった税金があるのじゃ。
例えばイギリス。「コンジェスチョン・チャージ(渋滞税)」なんてのがある。もともとイギリスは慢性的な渋滞病で、特にロンドンは重症とのこと。公共交通機関やハイブリッドカーなど一部の車両を除く全車種で、ロンドン中心部の特定エリア内に乗り入れる際に課金されるのじゃ。
日本円にして1日1,000円程度の額を3カ月前から当日の24時までに支払わなければ、罰金が課されるという厳しさじゃ。じゃが、この税金のおかげで渋滞が30%も改善されたというから、利用者にとっては税金を払った甲斐があるというものじゃな。
ほかにも、「独身税」、「肥満税」、「光るおもちゃ税」など、世界には変わった税金がやまほどある。興味があったら調べてみるのも面白いかもしれんぞ。
2、同じ目的の税の国際比較
では、ポピュラー且つ基幹的な税で日本と海外の違いを見てみよう。
2-1、法人税
折に触れ、日本は外国に比べて法人税が高いと言われている。果たしてどれほど高いのか、先進諸国と比較したデータ(財務省が各国の政府資料から抽出)があるから見てみよう。
《法人実効税率の国際比較》2018年1月現在(出典:財務省)
(注)法人所得に対する税率じゃ。国税だけではなく地方税も含まれているが、地方税の海外のデータは特定の州のものを使用している。フランスは、2018年から税率を段階的に引き下げ、2022年には25%となる予定であり、イギリスも2020年度から17%に引き下げる予定じゃから、世界的には法人税を下げる傾向が強まっているようじゃ。
比較的高いフランスが段階的に引き下げることを踏まえれば、先進諸国の中では、確かに日本は高いように感じるが、実は日本は2016年から税制改正を実施して、段階的に税率を引き下げてきていているのじゃ。下表を見るとその経緯がわかる。
《日本の法人税率の推移》
2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | |
---|---|---|---|---|
法人税率 | 25.5% | 23.9% | 23.4% | 23.2% |
大法人向け法人事業税所得割(地方税) | 7.2% | 6.0% | 3.6% | 3.6% |
国・地方を合わせた法人実効税率 | 34.62% | 32.11% | 29.97% | 29.74% |
国税も地方税も下げてきておるが、これは、政府の起業促進策としての側面も強いのじゃ。
2-2、個人課税(所得税)
個人の所得税を海外と比べると下記のようになる。これも2018年1月現在のデータじゃ。
項目 | 日本 | 米国 | 英国 | ドイツ | フランス |
---|---|---|---|---|---|
最低税率 | 5% | 10% | 20% | 0% | 0% |
最高税率 | 45% | 37% | 45% | 45% | 45% |
これは国税の比較だけじゃが、これに地方税を加えると、日本55%、米国49.7%、フランス54,7%となり、どの国も決して税金が安いとは言えない状況じゃ。
2-3、付加価値税(消費税)
日本でいうところの消費税、いわゆる付加価値税の比較も、お国柄が出ていて面白い。東欧諸国の付加価値税が高いというのはみんなも知っておろう。欧州と日本近隣諸国の具体的な数字で日本と比較してみよう。
《各国の付加価値税》
国名 | 税率 |
---|---|
ハンガリー | 27% |
ノルウエー | 25% |
スウェーデン | 25% |
デンマーク | 25% |
フィンランド | 24% |
ドイツ | 19% |
イギリス | 20% |
日本 | 8% |
韓国 | 10% |
中国 | 17% |
台湾 | 5% |
日本と台湾が異常に低いな。それと、韓国と台湾は食料品に関しては非課税となっているので単純比較はできない点に注意じゃ。
欧州の税率の高さが目立つが、東欧諸国は社会保障が手厚いことで有名じゃな。
スウェーデンは付加価値税だけではなく、所得税率が最大で56%、年収550万円以上では51%で、それ以下は30%と、正に税金のために働いているかのような状況じゃ。
実際、国民のほとんどに貯蓄がないといわれておるのじゃが、半面、「ゆりかごから墓場まで」という言葉があるように、社会保障の手厚さは他に例を見ないと言えるほど手厚い。
上手くいっていればこれほど住みやすい国はないじゃろうが、最近は、「物価の高さ」、「若年層の失業率上昇」、「高齢化による年金受給額と現役負担とのミスマッチ」などが指摘されていて、必ずしもうまくいっているとは言えないようじゃ。
3、まとめ
税金ごとに比較してみるとお国柄が出ていて興味深いが、日本の消費税率はやはり低いと言わざるを得ないな。今回は触れることができなかったが、所得税などの直接税と、消費税等の間接税の割合を示す「直間比率」なんかも見ながら、もうちょっと深掘りしてみると、税金の本質が見えてくるかもしれないな。機会があれば触れてみようと思う。乞うご期待じゃ!