収益認識会計基準シリーズ1回 従来の会計基準と新基準

目次

租税特別措置法で時限的に特例が設けられていた制度で、期限が延長されるものもあるのじゃ。対象となるのは「少額減価償却資産」と「交際費」で、この二つの適用期限が延長されることは中小企業者にとってはありがたいことなのじゃ。この二つについては、他の解説シリーズでも何度か取り上げているので認知度は高いと思うが、制度の概要を再度整理しながら2020年度改正部分を見ていこう。なお、まだいくつか改正された制度があるが、重要性が低いと判断したため説明を省くこととした。このため今回がこのシリーズの最終回となる。

1、中小企業者の少額減価償却資産の所得価額の損金算入特例措置の延長

まず、原則論からいうと、減価償却資産は、税制上の原則として減価償却によってのみ損金算入が許されるのじゃが、取得価額がごく少額のものまで常に減価償却によって費用化する計算を行うことを強制するとなると、企業会計においては必ずしも合理的とは言えない。このため、次の資産については、事業の用に供した事業年度において、その取得価額の全額を一時に税法上の損金経理とすることを認めているのじゃ。

(表1)全額損金算入できる少額資産等の範囲

1.使用可能期間が1年未満の減価償却資産
2.1個や1組などの1単位の取得価額(又は製作価額)が10万円未満の減価償却資産
このどちらかの要件に該当すれば、単年度で全額損金経理を認められる。

(表1)については、税法上当然認められる処理なのじゃが、このほかに、損金算入を認める「特例」というのがある。「一括償却資産の特例」と、「中小企業者等の少額減価償却資産の特例(時限措置)」がそれで、(表1)の少額減価償却資産を損金算入できることとの関係を整理しておこう。

(表2)特例措置の内容

項目 内容
1)一括償却資産の特例
本則適用で「特例」とされるものであり、時限措置ではない点に注意
1998年4月1日以後に開始した事業年度より、取得価額20万円未満の減価償却資産については、事業年度ごとに一括して3年間で償却できる方法(一括償却資産の特例)を選択することができる。この制度は、青色申告者に限らず全ての企業が選択することができ、期の途中で取得した資産であっても、月割りせずに事業年度ごとに一括して3年間で均等償却することができる点に特徴がある(この場合の残存価額はゼロとなり、備忘価額も残さない)。
2)中小企業者等の少額減価償却資産の特例
(租税特別措置法による時限措置であるため、将来は期限切れ、延長、措置内容の変更等が考えられる)
青色申告者である中小企業等が、取得価額30万円未満である減価償却資産を、2003年4月1日から2020年3月31日までの間に取得して事業の用に供した場合は、合計300万円に達するまでの分を、その事業年度の損金に算入することができる。これは、取得価額30万円未満の減価償却資産なので、消耗品費で処理するものに限らず、器具・備品、機械・装置等の有形固定資産はもとより、ソフトウエア、特許権等の無形減価償却資産も対象となる点に注目じゃ。
※この制度が2020年度税制改正において期限を2年間延長された。

以上をまとめると、取得して事業の用に供した減価償却資産について、選択できる税法上の処理方法は以下のとおりとなる。

(表3)減価償却資産を損金算入する選択肢

使用可能期間 取得価額 税務上の取扱い(複数の方法がある場合は、法人が選択できる)
1年以上 1)30万円以上 ・資産計上して減価償却
2)20万円以上
30万円未満
・資産計上して減価償却
・全額損金算入(青色申告中小企業者等で当該年度300万円を限度)
3)10万円以上
20万円未満
・資産計上して減価償却
・一括償却(20万円未満の資産を一括して3年間で均等償却)
・全額損金算入(青色申告中小企業者で当該年度300万円を限度)
4)10万円未満 ・資産計上して減価償却
・一括償却(20万円未満の資産を一括して3年間で均等償却)
・全額損金算入(少額資産の特例を使用して当該年度で全額損金)
1年未満 取得価額の
制限はない
・資産計上して減価償却
・一括償却(20万円未満の資産を一括して3年間で均等償却)
・全額損金算入(少額資産の特例を使用して当該年度で全額損金)

(表3)の2)が、2020年度税制改正において適用期限が2年間延長される部分。 また、青色申告中小企業者等のみに認められる制度である点に注目じゃ。

2、中小法人の交際費課税の特例措置の延長

税制上は、「交際費等」と言って、全額損金不算入が原則じゃ。交際費等の定義は、「交際費、接待費、機密費その他の費用で、その法人が得意先や仕入れ先、その他事業に関わりのある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(接待等という。)のために支出する費用」とされている。

この交際費が、原則として全額損金不算入なのじゃから、会社としてはたまったものではない。交際費を使えば使うほど、会計上の費用が増え(利益の減少)、かかる税金も増える(税金の増加)という泣きっ面に蜂状態になってしまうからの。この原則に一定の制限を加えて損金に算入できる交際費を認めているのが税制上の「特例措置」なのじゃ。その内容を見てみよう。損金不算入(税法上の費用から除外される)対象から除かれる(回りくどいが、損金として認められると言う意味)交際費等は次のとおりじゃ。

(表3)損金不算入対象の交際費等から除かれる費用

(1)専ら従業員の慰安の為に行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用

(2)飲食その他これに類する行為のためにする費用(ただし、専らその法人の役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除く)であって、その支出する金額を飲食等に参加した者の数で割って計算した金額が5,000円以下である費用。この項目を適用するためには、次の事項を記載した書類を保存していなければならない。

  1. 飲食等の年月日
  2. 飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名又は名称及びその関係
  3. 飲食等の参加した者の数
  4. その費用の金額並びに飲食店等の名称及び所在地
  5. その他参考となるべき事項

※この5,000円以下に係る判断の際の消費税の取扱いについては、その会社が適用している消費税の処理方法に基づき、以下のように判断することになるのじゃ。

諸費税処理方法 判定金額 判  断
税抜処理 税抜金額5,000円で判定 5,000円以下の飲食費等に該当する。
税込処理 税込金額5,400円で判定 5,000円以下の飲食費等に該当しない。

 

(3)その他の費用

    1. カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐいその他これらに類する物品を贈与するために通常要する費用
    2. 会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する物品を贈与するために通常要する費用
    3. 新聞、雑誌等の出版物又は放送番組を編集するために行われる座談かその他記事の収集のために、又は放送のための取材に通常要する費用

※費用の中身を見てみると、(1)は、通常、従業員の「厚生費」として支出され、(3)は宣伝広告費や会議費として処理するものじゃ。(2)は、かなり要件がきついが、5,000円以下ということと、取引先等事業に関わる社外の人間が必ず入っていなければならないことがポイントじゃ。これらの要件を満たせば、処理する勘定科目は何であれ、損金算入ができることになるのじゃ。

3、交際費損金算入の特例措置の要件

以上のように、原則として全額損金不算入である交際費等には特例が設けられ、この特例による交際費の損金算入限度額は、会社の資本金の額によって次のように定められているので確認しておこう(2014年4月1日以後に開始する事業年度)。

(表4)資本金の額と損金算入限度額

会社の資本金の額 損金算入限度額
1.期末の資本金の額が1億円以下 次のうち有利な処理を選択できる(適用期限は2020年3月31日までだったが、2020年度税制改正で2年間延長された)
ア.飲食費(社内接待分除く)の50%を損金算入
イ.年間800万円以下の交際費を全額損金算入
※税制特別措置法による特例は時限措置の為、期限が切れれば廃止となるか、制度が延長されるか、新しい制度となるかを注視しなければならない。
2.期末資本金の額が1億円超 飲食費(社内接待分除く)の50%を損金算入
なお、2020年度の税制改正において、資本金等が100億円を超える法人は、この特例の対象から外れることになった。

4、まとめ

今回の措置期限が延長される制度については、中小企業者にとっては恒久措置にしてほしいくらいの制度じゃ。過去の財務諸表や法人税の申告書を見てみるといい。それぞれ個別の対象取引についての書き抜きが添付されているはずじゃ。
税理士のアドバイスを受けながら、自社の税制上の特例措置の適用状況を確認するのも経営者にとっては勉強になるはずじゃ。税理士のアドバイスを受けながら、というのがポイントじゃ。一人で眺めると、誤った解釈や自己都合の判断に陥ることが多いためじゃ。

顧問税理士がいないなら、税理士紹介会社に相談して早めに顧問契約を締結したほうが良い。4月から改正後の税制が適用されるのじゃからな。

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