法人税と法人事業税とは? part2

目次

さて、今回は会社が納める税金のうち、国税である「法人税」と地方税の「法人事業税」についてみていこう。

1、法人税の概要

法人税と言うのは、株式会社や合同会社といった会社組織、協同組合などが対象となる税なのじゃ。また、学校法人などのような公益法人といわれる組織であっても、収益事業を営んでおれば、その部分に対しても課せられるな。

ここでは、株式会社で見ていくが、会社が払う税金の体系を把握しておこうかの。

課税目的 国  税 地方税
事業の成果としての利益 法人税 法人住民税、法人事業税
財産に課せられるもの line 固定資産税、事業税、自動車税
事業活動上課せられるもの 印紙税、登録免許税 不動産取得税
消費に係るもの

※課税事業者として行う納税手続きではなく、最終消費者として会社が負担する消費税。

消費税 地方消費税

*財産:会社が所有している土地や事務所、その他の機械装置、工場、工場内の機械設備、営業用車両など、事業用の投資資産のことじゃ。
このように、会社にかかる税金は、課税目的に応じて国税と地方税に分けられるが、取引で発生する印紙税や登記時にかかる登録免許税及び消費税などは、「租税公課」という勘定科目で処理され、事業上の経費として扱う。

一方、事業活動の成果としての「利益」にかかる「法人税」、「住民税」、「事業税」は、「法人税等」または「法人税・住民税等」といった勘定科目にまとめて別途計上されるのじゃ。

損益計算書でいうと、最終利益を算出するために、下記の損益計算書(抜粋)に見られるように、最後のほうに記載されるのじゃ。

金  額 説  明
税引前当期利益 〇〇〇〇 法人税などの税金を控除する前の利益の額
法人税、住民税及び事業税 〇〇〇〇 法人税、住民税等の税金の合計額
法人税等調整額 〇〇〇〇 (注1)
法人税等合計 〇〇〇〇 最終的に当年度負担する法人税等
当期剰余金 〇〇〇〇 税金を差し引いた後の当期の純利益

(注1)法人税等調整額
企業は、株主などの利害関係者に経営状況を正確に知らせる義務があるから、一般に公正妥当とされる会計の慣行と企業会計原則に則って財務諸表を作成している。

その一方で、税金の計算上、税務署が適用する会計手法との間で違いがあるのじゃ。当然のごとく税務署のほうが優先する為、税務会計を適用した税金を支払うことになる。

こうなると、実際に支払う税金と、企業会計上算出される税金に相違が生じるから、この相違を「法人税等調整額」という科目で帳簿上調整しているのじゃ。こうすることで、会社の利害関係者に対して、税金も払っているし、計算書類も企業会計に則って適正に処理しているということを知らせることができるのじゃ。

「税効果会計」といって専門的な話しになるので、これ以上は省略するが、法人税と言うのは、所得金額と税金を算出するまでにこのような厄介な手順がいくつもあるのじゃ。

2、法人税の税率と税額計算

法人税と言うのは、個人に当てはめると「所得税」ということになるな。会社の事業年度ごとに、その年度の利益に対して課税されるのじゃが、この計算の仕方には特徴があるのじゃ。

普通に考えれば、法人税=その年度の利益(所得)×税率となる。ところが、さっきの企業会計と税務会計の違いがあって、この計算ルールを複雑にしておるのじゃ。

まあ、複雑な計算ルールの話しは別の機会にするとして、法人税の税率について見てみよう。法人税率は、組織形態によって異なるのじゃが、株式会社では下記のようになっておるのじゃ。

【2018年4月1日現在の法令で記載】

資本金が1億円以下
(中小法人)
資本金1億円超
(大法人)
所得金額が年800万円以下の部分 19.0% 23.2%
所得金額が年800万円超の部分 23.2%
(注)中小法人と大法人については、法人税法上の区分で記載している。
〇中小法人とは、普通法人のうち各事業年度終了時における資本金または出資金の額が1億円以下であるもの、または資本若しくは出資を有しないものをいうのじゃ。
〇大法人は、中小法人以外の法人じゃ

このように、会社の資本金が1億円を境にして税率が異なるのじゃ。資本金1億以下の会社の場合、所得額が800万以下の部分に対する税率が低いため、法人税額全体で比べても、資本金1億円超の会社よりも小さくなるのじゃ。試算してみよう。

《法人税額の比較・計算例》

line2 (中小法人)
資本金額:8,000万円
所得金額:3,000万円
(大法人)
資本金額:2億円
所得金額:3,000万円
(1)
所得金額が年800万円以下の部分
800万円×19%
=152万円
3,000万円×23.2%
=696万円
(2)
所得金額が年800万円超の部分
(3,000万円-800万円)×23.2%=510万円
法人税額計(1)+(2) 662万円 696万円

法人税についてはこんな感じじゃが、イメージはつかめたかな? では、次に事業税についてみてみよう。

3、事業税の税率と税額計算

事業税とは、どんな税金じゃろうか。会社が事業を行うためには、警察や消防、道路や港湾といった公共の施設やサービスを利用することになる。これらは地方自治体の行政サービスとして提供されるものじゃから、その利用料を払わないといけない。

会社は、この利用料を事業税と言う形で負担しているのじゃ。ちなみに、事業税は地方税の中でも都道府県税で、市町村には入らないので注意してくれ。

事業税の税率と税額の計算方法についてみてみようか。事業税は構成がちょっと変わっていて、分かりにくいかもしれんから、イメージだけ掴むように意識するといい。

事業税は、①事業税額と②地方法人特別税額(2019年9月末まで)の二つで構成されておる。①の事業税額は、「所得割」と「付加価値割」と「資本割」の三つで構成されておるのじゃ。②の地方法人特別税額は、「所得割」×税率で」計算されるのじゃ。

《東京都の法人事業税税率表》

区分 法人の種類 所得等の区分 2016年4月1日から2019年9月30日までに開始する事業年度(税率:%)
不均一課税適用法人の税率
(標準税率)
超過税率
所得を課税標準とする法人 普通法人、公益法人、人格のない社団等 所得割 軽減税率適用法人 年400万円以下の所得 3.4 3.65
年400万円を超え
800万円以下の所得
5.1 5.465
年800万円を超える所得 6.7 7.18
軽減税率不適用法人
付加価値割 1.26
資本割 0.525

※収入金額を課税標準とする法人、外形標準課税法人については省略する。
※「超過税率」が適用されるのは、資本金の額が1億円超、且つ所得額が2500万円超又は年間収入金額が2億円超の場合に適用される。

《地方法人特別税の税率表》

課税標準 法人の種類 2016年4月1日から2019年9月30日までに開始する事業年度(税率:%)
基準法人所得割額 外形標準課税法人以外の法人 43.2
外形標準課税法人 414.2
基準法人収入割額 43.2

この地方法人特別税というのは、2008年10月から一定期間、地方税である法人事業税の一部を国税として徴収して、国が都道府県に配分するというものなのじゃ。地方の財政格差縮小が目的なのじゃが、2019年10月1日の消費増税を機に、特別法人事業税という税に衣替えすることになっておる。

《事業税額の算出》・・・所得金額を2,000万円とした計算例

①事業税 標準税率 税額の計算
所得割 所得金額400万円以下の部分 3.4% 400万円×3.4%=136千円
所得金額400万円超

800万円以下の部分

5.1% (800万円-400万円)×5.1%

=204千円

所得金額800万円超の部分 6.7% (2,000万円-800万円)×6.7%

=804千円

合計 1,144千円
地方法人特別税
計算された所得割の金額に対する割合 43.2% 1,144千円×43.2%

=494千円

事業税額合計(①+②) 1,638千円

※この例では、超過税率適用外として標準税率で示しているので、「付加価値割」と「資本割」は登場しないことに留意。

以上が、法人税と事業税のあらましじゃ。どちらかというと事業税のほうが複雑じゃが、両方とも仕組みのイメージを掴んでおけば良いじゃろ。
地方法人特別税は、2019年10月1日から制度が変わるので、都道府県のホームページで税率などを早めにチェックしておいたほうがよいな。具体的には、3月決算の法人の場合は2021年3月末の決算から新制度が適用になるので注意じゃ。

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