法人成りにかかる税務講座シリーズ第3回《法人化のメリットとデメリットの把握その3》Column

  vol.0098
ラボン博士

今回は、法人化メリットの中の「保障」と「事業承継」、そして「消費税」に関して見ていこう。法人化することで、経営者のみならず、配偶者や家族従業員並びにその他の従業員は、健康保険や厚生年金という手厚い保障を手に入れることができる。また、個人事業主の悩みの種ともなっている「事業承継」や「相続問題」についても一定の方向性が見えてくるはずじゃ。


1.法人化によるデメリットとは

前回までは法人化することのメリットを紹介してきたが、メリットを得れば、必ずそれに伴って新たな課題が発生するものじゃ。これは、デメリットというよりもむしろ、法人化しなければ出てこない問題と言えるのじゃが、会社を設立する際には、この点も把握しておかなければならない。以下、デメリットとされる主なものを紹介していこう。


1-1.会社設立はただではできない

当然と言えば当然のことから話しをしよう。会社を設立するにはそれ相応の費用が必要じゃ。この費用というのは、設立する会社の種類によって異なる部分もあるので、会社法で規定されている会社についてみていこう。


会社を設立する費用は、大きく分けて設立登記に至るまでの費用と、会社成立から業務を開始するまでの費用(一般的にはこれを「開業費」と言っておる。)がある。この設立登記に係る費用じゃが、主に次のようなものが必要となる。

(表1-1)設立登記の際に必要となる費用
(1)登録免許税
(2)定款の印紙代
(3)定款の認証手数料(株式会社の場合、公証人による認証が必要)
(4)定款謄本手数料(設立申請時に定款の謄本を添付しなければならない)
(5)発起人の印鑑証明書の交付を受ける際に必要な手数料
(6) 会社設立登記手続きを専門家に依頼する場合の報酬


なお、会社設立にあたっては、定款は必ず作成しなければならないが、このほかにも、株主総会、取締役や監査役といった会社の機関設計をどうするかということや、従業員を雇うことになれば就業規則や給与規程、また、会社の経理を定めた経理規程などの規程類の整備が必要となる。これらは法令に関わる部分もあるため、司法書士や税理士等の専門家に相談する必要があることを考えれば、手続き自体を専門家に委託することも視野に入れなければならない。


これらの費用について、会社の種類ごとに金額を見積もると次のようになる。


(表1-2) 会社法で規定された会社種類別の主な設立費用(印鑑証明書等金額の小さいものは除く)

会社区分
費用項目
株式会社 合同会社 合名会社
合資会社
(1)登録免許税 150,000円 60,000円 60,000円
(2)定款印紙代 40,000円 40,000円 40,000円
(3)定款認証手数料 50,000円 0円 0円
(4)定款謄本手数料 2,000円 0円 0円
合計 (1)~4)の合計 242,000円 100,000円 100,000円
電子定款使用で印紙代(2)不要時 202,000円 60,000円 60,000円

【会社の種類について】

会社法で定められた会社は、株式会社、合同会社、合名会社、合資会社の4種類じゃ。会社法施行前にあった有限会社は、会社法施行と同時に根拠法である有限会社法が廃止されたため新規設立ができなくなった。このため、会社法施行時点で存在した有限会社は、「特例有限会社」という名称で、株式会社の扱いで存続しておる。また、会社法施行で、株式会社よりも設立手続きが容易な「合同会社」が創設されたが、これは、合名会社及び合資会社とともに「持分会社」という株式会社とは性格の異なる会社形態じゃ。


【費用について】

(1)登録免許税というのは、設立登記をする際に課せられる税金じゃが、登録免許税法という法律で、会社種類ごとに計算方法が定められておる。株式会社・合同会社は資本金に0.7%を乗じた額となるが、計算した額がそれぞれの最低額に満たないときは、最低額が適用されるのじゃ。最低額は、株式会社が15万円、合同会社で6万円となっておる。なお、合名会社及び合資会社の場合は、率ではなく、一律60,000円となっておる。


(2)紙に印刷した定款は、印紙税法によって、株式会社・合同会社ともに4万円が課税(収入印紙を貼付)されるが、電子定款を利用すると収入印紙は不要になる。電子定款は、具体的には定款をPDF化したデータで提出する方式じゃ。


(3)公証人による定款認証が必要となる法人は、株式会社、一般社団法人、一般財団法人、特定目的会社、相互会社、弁護士法人、監査法人等で、持分会社(合名・合資・合同会社)は対象外じゃ。


(4)定款の謄本は、会社設立登記の際に添付しなければならない。会社設立時の定款は「原始定款」と呼ばれ、原本は公証人が20年間保管することになっておる。このため、会社設立登記の際は、公証人に定款謄本を発行してもらうことになり、その手数料が必要となるのじゃ。


※なお、この見積額は、全ての手続きを自分で行うことを前提にしているため、専門家に手続き自体を委託する場合は、この他にその費用として10万円程度は見込んでおく必要があるので注意


1-2.赤字でも課税される税金がある

個人事業主の場合は、事業が赤字となれば、所得税、住民税、事業税ともに課税されないが、法人となると、たとえ赤字でも住民税の「均等割」という税金がかかってくるのじゃ。この均等割と言うのは、資本金の額や事業所の数、そして従業員の人数などに応じて課税されるものじゃ。地方税なので、自治体によって多少金額が異なるが、年間7万円程度かかると思わなければならない。


1-3.社会保険料や労働保険料の負担が生じる

社会保険(健康保険・厚生年金)は、個人事業の場合は、従業員が5人未満であれば任意加入じゃが、法人化すると経営者だけの一人会社であっても強制加入となる点に注意じゃ。保険料は、会社と被保険者が折半なので、会社にも被保険者にも負担が生じることになる。また、労働保険については、個人事業か法人かにかかわらず、従業員を一人でも雇入れると強制加入事業所となり、労働保険料の負担も生じる。


なお、労働保険とは、労働者を保護することが目的の制度であり、雇用保険と労働者災害補償保険を総称した言葉じゃ。労働者のための制度であるから、原則として会社の役員などの「使用者」は加入できないことになっておるのじゃ。


1-4.事務負担が増大する

法人化すると、企業会計原則に従った厳密な会計処理が求められることになる。総勘定元帳をはじめ、各種補助簿を備え、勘定科目の設定も必要になる。この点は、会計ソフトが発達しているので、ある程度経理事務に慣れた従業員がいればなんとかなるが、最終的に決算と法人税等の申告事務まで行うことになるため、会計処理に関する労力だけでも相当の負担が生じることになる。


税務面でみても、個人事業主のときは、青色申告控除額65万円を確保するために複式簿記による記帳を行うことがあるものの、あくまでも簡易的な内容であることが多いものじゃ。法人の場合は、会計ソフトを使用するとはいえ、本格的な複式簿記による記帳と会計知識が求められるので、顧問税理士が必要になると考えられる。


実務上は、これに加えて、健康保険や厚生年金、労働保険等に関する事務、源泉徴収事務、株主総会や会社の規模によっては取締役会に関する事務等も発生するため、事務量の増大とともに人件費負担が大きくなることを想定しておかなければならない。


1-5.税務調査が増える?

法人になると、税務調査の対象となる機会が増えることを覚悟しなければならない。税務当局の人員縮小で調査機会自体は減少しているものの、新設会社については、一定期間が経過すると事業量や申告書の内容等を勘案しながら確実に調査が入ると考えなければならない。そして、税務調査は一度入ると、事務不備等の指摘があれば改善状況を確認するために、以後も定期的に調査に入ると考えなければならないため、前述の会計処理とあわせ、顧問税理士は不可欠な存在となることを憶えておかなければならない。


2.会社と経営者間の資産譲渡の問題点

個人間の資産の譲渡にあたり、時価よりも低い価格で行った場合、譲受人には時価と購入価額との差額に対して贈与税が課税されることになるが、一方の譲渡人には、実際の譲渡価額からその資産の取得費などを差引いた所得に限って所得税がかかることになる。


これが、法人化すると、個人で保有していた資産を法人に対して時価より低い価額で譲渡するとき、時価の2分の1未満で売却する場合や、時価の2分の1以上で売却する場合であっても、「同族会社等の行為又は計算の否認(所得税法第157条)」の規定に該当すると、譲渡人である個人については、「みなし譲渡所得」が適用され課税されることになる。言い換えると、実際の売却価額ではなく、時価で売却して収入があったとみなされ、その収入から取得費等を差引いた所得に対して所得税がかかることになるのじゃ。


このため、取得した時よりも値上がりしている土地などは「含み益」のある財産となり、これを法人に売却すると、売却した個人には譲渡所得税がかかり、譲受人たる法人は、時価と取得価額との差額分が「受贈益」となって法人税の課税対象となるのじゃ。


このように、法人化することで、個人間の資産移動では見られない課税関係が生じてくるため、経営者(個人)と法人との間の資産の移動にあたっては、逐一税理士とすり合わせをして課税関係を整理しながら進める必要があるということに留意しなければならないのじゃ。


3.まとめ

今回は、法人化すると実務的な面で顧問税理士が必要になる場面が多いことを認識できたのではないだろうか。現在、個人事業主として事業を行っていて、法人化を考えているならば、法人化の前後において顧問税理士は必ず必要になるので、早い時期に税理士紹介会社にして、法人成りに強い税理士を紹介してもらうことを検討してみてはいかがかな。


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