会社の会計シリーズ(理解編)第15回:時価会計と減損会計の2Column

  vol.0074
ラボン博士
前回から、金融商品会計(時価会計)と減損会計という会計制度に入り、金融商品会計を中心に解説した。今回は金融商品である「有価証券の減損」について解説する。ここで言う「減損」とは、金融商品に係る会計処理の名称であり、後に解説することになる「減損会計」とは異なるものなので混同しないよう注意してほしい。

1.有価証券の減損とは

有価証券は、「売買目的有価証券」、「満期目的有価証券」、「子会社及び関連会社株式」、「その他有価証券」に分類され、「売買目的有価証券」と「その他有価証券」は時価評価することは前回説明した(本解説シリーズ第14回(表3)参照)。


しかし、これには例外があって、売買目的有価証券以外の有価証券であっても、価値が取得価額に比べて著しく低下している場合には、「減損処理」をして、評価差額を損益計算書に計上するとともに、減損処理をして価値が下がったあとの価額を貸借対照表に計上しなければならないのじゃ。これは、経済的な実態を財務諸表に反映して、株主や債権者等の利害関係人に知らせる必要があるからじゃ。


このように、評価差額を損益計算書に計上するとともに、価値が下落した後の価額を貸借対照表に計上する会計処理を、「有価証券の減損」といい、そのイメージは下表のとおりじゃ。


(表1)売買目的有価証券以外の有価証券(減損処理)

2.価値の著しい下落の判定

なお、「価値の著しい下落」の判定は、一般的には50%以上の下落とされるが、対象となる有価証券の銘柄に時価があるか否かによることになる。その具体的な判定方法と、有価証券の保有目的との対応関係を整理すると下表のようになる。

(表2)

対象となる有価証券 減損処理の内容
時価のある有価証券
(株式、債券)
時価が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除いて、時価を以て貸借対照表価額とし、その評価差額は、当期の損失として処理する。
《処理基準》
1)下落率30%未満:減損処理不要
2)30%以上50%未満:「各企業が設けた基準」によって、著しい下落と判断され、回収の可能性がなければ減損処理する。
3)50%以上:回収可能性がなければ減損処理する。

《回収可能性の判断・株式の場合》
◎回収可能性ありの判断基準
株価の下落が一時的なものであり、期末日後、概ね1年以内に時価が取得原価にほぼ近い水準まで回復する見込みのある場合は、減損処理は不要。

◎回収可能性なしの判断
・株式の時価が、過去2年間にわたって著しく下落した状態にある場合。
・株式発行会社が債務超過の状態にあるとき。
・2期連続で損失を計上しており、翌期も損失と予想される場合。

《回収可能性の判断・債権の場合》
単に一般市場金利の大幅な上昇によって時価が著しく下落した場合でも、早晩時価の下落が解消すると見込まれる場合は、回収可能性があると認められる。一方、次のような、「信用リスクの増大に起因して時価が著しく下落した」場合には、回収可能性があるとは認められない。
・格付けの著しい低下。
・債権の発行会社が債務超過や連続して赤字決算の状態にある場合。
時価のない有価証券
(株式の場合)
その株式の発行会社の財政状態の悪化により、実質価額が著しく低下したとき、相当額を減額し、評価差額を当期の損失として処理する。
《処理基準》
1)50%未満:減損処理不要
2)50%以上:回収可能性がなければ減損処理する。

《回収可能性の判断》
投資先が「子会社」のように支配の及ぶ会社等であれば、将来へ向けた「事業計画等」を入手して、回復の可能性を検討することができるが、この場合は、次の点に留意する必要がある。
・その事業計画等が実行(実現)可能な合理的なものであること。
・概ね5年以内に回復すると見込まれること。
・回復可能性は、毎期見直す必要があること。
時価のない有価証券
(債権の場合)
償却原価法(注1)を適用した上で、債権の貸倒見積高(注2)の算定方法に準じて償還不能見積高を算定し、会計処理を行う。

(注1)償却原価法
債権を債券金額(額面)よりも低い価額又は高い価額で取得した場合に、その差額に相当する金額を償還期に至るまで、毎期一定の方法で貸借対照表に加減する方法。
(例)額面1,000円、発行価額900円、期間5年の債権を取得した場合。
差額の100円を、5年間にわたって20円ずつ配分して、債権の価額に加えていく。取得した年度は900円、次の年度以降は、920円、940円、960円、980円となって、満期年度には1,000円で評価される。この場合の、毎期価額に加える20円は、利息相当分として当期の利益となるわけじゃ。

(注2)債権の貸倒見積高
債務者の財政状態及び経営成績等に応じて、債権を次のように区分し、それぞれ所定の方法で「貸倒見積高」を算定する。

(表3-1)金融商品に関する会計基準で定められた債権の区分
1)一般債権(いっぱんさいけん):経営状態に重大な問題が生じていない債務者に対する債権
2)貸倒懸念債権(かしだおれ けねん さいけん):経営破綻には至っていないものの、債務の弁済に重大な問題が生じているか又は生じる可能性の高い債務者に対する債権
3)破産更生債権(はさん こうせい さいけん):経営破綻又は実質経営破綻の債務者に対する債権

(表3-2)同会計基準で定められた「貸倒見積高」の算定方法

債権の区分 算定方法
一般債権 債権全体又は同種・同類の債権ごとに、債権の状況に応じて求めた過去の貸倒実績率等合理的な基準に基づき、貸倒見積高を算定する。
貸倒懸念債権 債権の状況に応じて、次のいずれかの方法によって貸倒見積高を算定するが、同一の債権については、債務者の財政状態及び経営実績の状況等が変化しないかぎり、同一の方法を継続して適用しなければならない。
1)債権額から、担保の処分見込額及び保証による回収見込額を減額し、その残額について債務者の財政状態及び経営成績を考慮して、貸倒見積高を算定する方法。
2)債権の元本の回収及び利息の受け取りに係るキャッシュフローを合理的に見積もることができる債権については、債権の元本及び利息について、元本の回収及び利息の受け取りが見込まれる時から当期末までの期間にわたり、当初の約定利子率で割り引いた金額の総額と、債権の帳簿価額との差額を貸倒見積高とする方法。
破産更生債権 債権額から担保の処分見込額及び保証による回収見込み額を減額し、その残額を貸倒見積高とする。

なお、一般的な会社において、ここまで厳密な貸倒見積高を算定する機会は少ないかもしれないが、「貸倒れ」という、経営上の避けて通れない課題について、経営者として適切な認識を持ってもらうことを目的にこの表を掲載していることに留意してもらえたら幸いじゃ。


3.まとめ

金融商品に関する会計基準、とりわけ時価会計の考え方について解説してきたが、その概要はつかめたじゃろうか? 「金融」というと、「うちは関係ない」という経営者の方がいるかもしれないが、一般的な会社においても「金融商品に係る会計基準(時価会計)」の影響が及ぶことは確かじゃ。もちろん、こんな専門的なことまで覚えるのが経営者の役目とは言わないが、顧問税理士がいれば、決算期は当然としてしても、少なくとも期中に一度は、有価証券や売上債権の状態等をチェックするものじゃ。


このときに、税理士任せにするのではなく、何がしかの質問をしたりして、経営者として、債権管理を意識しているということを示すことが重要じゃ。その上で、税理士との間で、経営談議に花が咲くようになると、税理士の自社に対する力の入れ方が違ってくるぞ。未だ税理士との契約がない場合は、税理士紹介会社に相談し、求める税理士像を伝えれば最適な先生を紹介してくれるはずじゃ。





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