会社の会計シリーズ(基本編)第6回《会計の目的・役割・・・貸借対照表その3》Column

  vol.0065
ラボン博士
前回までで貸借対照表の「資産の部」についての説明をあらかた終えたので、今回は「負債と純資産」の部について解説しよう。負債と純資産は、貸方勘定で、貸方勘定は、基本的に、会社がどこからお金を調達してきたかを記録する部分であり、そのお金が最終的に誰に帰属するかも表していると考えればいいじゃろう。

1.負債の部(流動負債と固定負債)

負債の部も、資産同様に流動負債の部と固定負債の部に分かれておる。以下、それぞれの勘定科目とその性質について解説する。


1-1.負債の部の勘定科目と流動性

(表1)負債の部

流動負債 固定負債
・支払手形
・買掛金
・短期借入金
・未払金
・未払法人税等
・未払消費税等
・未払費用
・前受金
・預り金
・前受収益
・仮受金
・仮受消費税等
・賞与引当金
・繰延税金負債
・社債
・長期借入金
・退職給与引当金
・負の”のれん“
・繰延税金負債

負債の「流動」と「固定」についても資産の場合と同様に、資金化までの期間で分けておるのじゃ。流動負債は、通常の営業で発生する負債か、あるいは1年以内に返済する負債のことであり、そうでない負債が「固定負債」となる。ただ、資産の場合と違うのは、資産は流動性が高いほうがよかったが、負債の場合は、固定負債の方が流動負債よりも望ましいという点じゃ。返済期限が短いとお金の滞留期間が短いため、資金繰りが厳しくなる原因となるからじゃ。


1-2.流動比率

流動資産と流動負債を比較することで、「会社の安全性」を見ることができるのじゃ。ここで言う安全性とは、「会社が破綻せずに借金を返せる」という意味じゃ。安全性には、「短期の安全性」と「長期の安全性」があるが、このうちの「短期の安全性」について、流動資産と流動負債を比較することで分析することが可能なのじゃ。


流動負債というのは、すぐに返済(支払)期限が到来するので、これを支払うことができるだけのお金を持っていなければならないということになる。言い換えれば、流動負債より多くの流動資産を持っていれば、当面の資金繰りに問題はないということじゃ。この流動資産が流動負債をどの程度上回っているかが、「会社の安全性」を示す一つの指標となるのじゃ。これを流動比率と言い、次の計算式で求めることができる。


流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債

この流動比率は、200%以上確保することが望ましいと言われておるのじゃが、流動資産の中にはすぐに資金化できないものも含まれておるから、安全性分析を厳密にしたいときは、流動資産から「棚卸資産」を除いた「当座資産」と「流動負債」を比べる方法を使う。それが、「当座比率」といわれる指標で、次の計算式で求めることができる。


当座比率 = 当座資産 ÷ 流動負債
当座比率は、100%以上が望ましいと言われておる。

このように、流動比率と当座比率を使って会社の当面の安全性をチェックすることができるが、流動資産と言っても、数日以内に資金化できるものと11カ月後(1年未満なので)まで資金化できないものが混在しているため単純な見方は禁物じゃ。


また、流動負債の方にも、数日で返済が必要なものから11か月後まで返済期が到来しないものが混在しているのが実態なので、この二つの指標は、あくまでも会社の状態が悪化したときのシグナルを感知するためのアンテナ<・sぱn>のようなものだということを知っておく必要があるのじゃ。


2.純資産


貸借対照表の最後の「純資産の部」について解説する。純資産の部には、株主が払い込んだ資本(出資金)の部分と、会社が利益をあげて貯めてきた部分の2種類があるのじゃ。株主が払い込んだ部分は「資本金」と「資本準備金」で、会社が利益を貯めてきた部分が「利益剰余金」といって、利益準備金、その他剰余金(〇〇積立金など)の勘定科目で管理されている。


会社は、毎事業年度ごとに利益を上げると、それをもとに株主に配当をするが、稼いだ利益全てを配当に回してしまうと、事業規模拡大で資金が必要となっても、自己資金として使えるお金がなくなってしまうため、株主総会で承認してもらうことで利益の一部について、配当財源から外して、目的を定めて積み立てることができるのじゃ。


この部分が、いま話題になっているいわゆる内部留保と言われる部分じゃ。内部留保が大きくなればなるほど財務基盤が強化されていくが、一方で、本来ならば配当として株主に還元されるはずのお金が眠っている状態じゃから、株主にとっては、眠らせたお金を何倍にも増やしてもらわないと困る。それができないなら、株主に配当するか、そのお金を返すのが望ましいと言える。


このお金を返すという行為が、自己株式の取得じゃ。株主から会社が自分の株式を買い取るのじゃが、会社は自分の株式を持つことが制限されているため、取得した株式とともに、その株式に相当する資本金の額を帳簿から消さなければならないのじゃ。株主に出資金を返して資本を減らすのじゃな。


3.固定比率

固定資産と固定負債及び純資産から、長期の安全性を見ることができる。長期の安全性の見方は、「固定資産」が「固定的なお金で賄われているか」を確認するものじゃ。工場や建物などに投資されたお金は、何十年(法定耐用年数)もかけて、その工場などから生み出される収益で回収していくものじゃ。


この投資資金はどこから出たものかと言うと、返済期間の長い長期の借入金や、返済の必要のない自己資本ということになる。借入金は負債でいずれは返さなければならないお金じゃが、自己資本は、最終的には株主の持ち物ということにはなるが、返済日が決まっているわけではない。そこで、固定資産と自己資本の比率を見て長期的な安全性をチェックする数値があるのじゃが、これを「固定比率」と言う。


固定比率は、固定比率=固定資産÷自己資本で求められ、この数値が低いほど自己資本で賄われている割合が高いことになり、長期的な安全性が高いと言うことになる。長期借入金のような固定負債を含めて見る場合は「固定長期適合率」と言って、固定資産÷(自己資本+固定負債)と言う計算式で求めるのじゃ。この数値が100%を超えると危険水域ということになる。


長期的な資金で賄いきれないと言うことじゃから、短期資金で補わなければならず、そうなると、利益はその短期資金の利払いと返済に回ってしまい、資金繰りがどんどん圧迫されていくことになる。このような状態になることが分かれば、利益が出ても配当を抑えて内部留保を積み増し、自己資本を厚くしていこうとする会社の目的が汲み取れるのではないかな?


4.自己資本比率

長期的な安全性を見る指標として、「自己資本比率」というのがある。これは、総資産に対する自己資本の割合を示す指標で、基本的に数値が大きいほど経営状態が良い。ただし、少ない資本で大きな利益を上げることが求められる現代は、レバレッジと言って借入金のような負債を大きくして(負債で調達した資金を多く使って)、株主利益を高めようとする動きが強いのじゃ。株主資本が小さいほうが、一人の株主に還元される利益(配当)が大きくなるからじゃ。


これは欧米的な考え方で、日本の企業はリーマンショックの経験から、とにかく内部留保を厚くして、万が一、再度リーマン級の金融危機が起きたとしても、びくともしない財務基盤構築に邁進してきた経緯がある。このため、毎年相当額の利益が上がっても、設備投資の水準が低く抑えられており、これが、景気が本格的に上向かない原因の一つと言われ、政府が内部留保を設備投資に回すよう強く働きかけているのが現状なのじゃ。いずれにしても、最も重要なのは、資金の調達方法のバランスなのじゃ。特定の要素が大きすぎても、小さすぎてもバランスを欠いて、様々な弊害が起きるものじゃ。


5.まとめ

今回から経営分析用語も出てくるようになった。これら用語の知識は税務とは直接関係はないが、経営者にとっては知っておくべきものじゃ。もちろん、税理士はこのあたりの知識も豊富じゃから、配当金や内部留保金額の決定を含めアドバイスをもらえると心強いものじゃ。決算期が近い会社の場合、決算だけでも見てもらうのも可能じゃから、一度税理士紹介会社に相談してみると良い。





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