税務調査を意識した会計処理と税理士との付きあい方 第20回《貸倒引当金》Column

vol.0053
ラボン博士
前回の「貸倒損失」に続いて、関連性の高い「貸倒引当金」について解説しよう。前回は「損失」ということで、実際に金銭債権等の資産を貸借対照表から消す措置だったが、今回の「引当金」は、一定の基準のもとで損失や費用の発生を「見積もって計上」し、毎期洗い替えするという会計処理じゃ。

なお、税務調査対応のための資料等の準備については、前回の「貸倒損失」と同様の内容となるので、ここでの説明は省くこととする。以下、税法上の損金算入の要件を中心に解説する。


1.貸倒引当金とは

まず、「引当金」という勘定の意味を知っておこう。引当金とは、将来発生することがほぼ確実で、その原因となる取引が当期以前に行われている場合、その発生するであろう、費用や損失に備えて予め計上する費用をいうのじゃ。


「貸倒引当金」とは、回収が翌期以降になる金銭債権について、将来の貸倒れ(回収不能によって不良債権化すること)に備えて計上する引当金を言い、法人税法では、このような「将来の貸倒損失の見込額」について一定の費用計上を認めておるのじゃ。


なお、2012年4月1日以後に開始する事業年度から、貸倒引当金を繰り入れることができる適用法人は、次のとおり限定されており、2015年3月31日までの間に開始する各事業年度の繰入限度額については、一定の経過措置が設けられておる。


(表1)2012年4月1日以後に開始する事業年度から貸倒引当金を繰り入れることができる法人

1.資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下の法人のうち100%子法人等を除く法人
2.資本又は出資を有しない普通法人
3.公益法人等または協同組合等
4.人格のない社団等
5.銀行、保険会社その他これらに準ずる法人
6.金融に関する取引に係る金銭債権を有する一定の法人(1~5に該当する法人を除く)

2.個別評価金銭債権と一括評価金銭債権

貸倒引当金の対象となる金銭債権は、個別に回収不能見込額を計算する「個別評価金銭債権」と、前3年間の実績貸倒率を用いて繰入限度額を計算する「一括評価金銭債権」に区分される。以下、各債権について解説する。


2-1.個別評価金銭債権

期末において、その一部につき貸倒れその他これに類する事由(更正手続開始の申し立てた等)による損失が見込まれる金銭債権であって、下記に掲げるものを言う。


(表2)個別評価金銭債権と貸倒引当金繰入限度額

個別評価金銭債権 税法上の貸倒引当金繰入限度額
1.以下の事由によって棚上げ又は年賦償還されることとなった金銭債権(長期棚上げ債権)
イ.会社更生法又は金融機関の更生手続きの特例等に関する法律の規定による更生計画認可の決定。
ロ.民事再生法の規定による再生計画認可の決定。
ハ.会社法の規定による特別清算にかかる協定の認可の決定。
ニ.イからハまでに準ずる合理的な基準により債務者の負債整理を行う債権者集会の協議決定など。
〇その事由が生じた事業年度終了日の翌日から起算して5年以内に弁済される金額以外の金額。
2.債務者について、債務超過の状態が相当期間継続し、事業好転の見通しがないこと、災害、経済事情の急変等により多大な損害が生じたこと、その他の事由により、その一部の取り立て見込がないと認められる金銭債権(一部回収不能債権)。 〇取り立て等の見込がないと認められる金額。
3.債務者について、次の事由が生じている金銭債権(形式基準該当債権)
イ.会社更生法等の規定による更生手続き開始の申し立て
ロ.民事再生法の規定による再生手続き開始の申し立て
ハ.破産法の規定による破産手続開始の申し立て
ニ.手形交換所による取引停止処分
〇その債権の額(実質的に債権と見られない部分の金額及び取立て等の見込があると認められる金額を除く)×50%
4.外国の政府、中央銀行または地方公共団体に対する金銭債権のうち、これらの者の長期にわたる債務の履行遅滞によって経済的な価値が著しく減少し、かつ、その弁済を受けることが著しく困難であると認められる事由が生じているもの(外国公的不良債権)。 〇その債権の額(実質的に債権と見られない部分の金額及び取立て等の見込があると認められる金額を除く)×50%

(表2)で記載されている「更正計画」及び「再生計画」等の用語については、第19回で説明しているので参照。


2-2.一括評価金銭債権

売掛金や貸付金、その他これらに準ずる債権(注1)については、所定の方法で計算した会社の貸倒実績率を基礎として貸倒引当金を計上することができる。この繰入限度額の計算式は次のとおりじゃ。

〇一括評価金銭債権の繰入限度額=売掛金・貸付金等債権の額(個別評価債権を除く)×貸倒実績率
〇貸倒実績率=期末一括評価金銭債権の帳簿価額合計額×過去3年間の平均貸倒額÷過去3年間の一括評価金銭債権の平均帳簿価額

また、中小法人であれば、この貸倒実績率によらず、業種に応じた法定繰入率によることも可能じゃ(ただし、この場合は、債権の額から実施って気に債権と見られない金額を除く必要がある)。業種区分と法定の繰入率は以下の通りじゃ。


(表3)業種区分・法定繰入率

業   種 法定繰入率
卸売業及び小売業(飲食店業及び料理店業を含む) 1000分の10
製造業(電気・ガス事業含む) 1000分の8
金融業及び保険業 1000分の3
割賦販売小売業並びに包括信用購入あっせん業及び個別信用購入あっせん業 1000分の13
その他 1000分の6

【計算式】
繰入限度額=(期末一括評価金銭債権の帳簿価額-実質的に債権とみられない金額)×法定繰入率
※なお、実質的に債権と見られない金額とは、例えば債務者から受け入れた金額(買掛金など相殺関係が成り立つもの)が該当する。


(注1)その他これらに準ずる金銭債権
・未収譲渡代金、未収加工料、未収請負金、未収手数料、未収保管料、未収地代家賃、貸付金の未有利子で益金算入されたもの。・立替金、・保証債務を履行した場合の求償権等が含まれている。


3.貸倒引当金の経理

貸倒引当金の経理は、税務上は損金経理となるが、その財務諸表への表示方法は、負債の部に表示する方法のほか、総勘定元帳と確定申告書における明示を条件として、資産の部に債権から取立不能見込額として控除する形式で表示(▲表示)する方法、又は、債権をその控除後の金額で表示して、貸借対照表の注記で「取立不能見込額」を記載する方法をとってもよいこととされている(法人税法基本通達)。


なお、法人税法上の取扱いとして、貸倒引当金の繰入額は、計上した翌事業年度にその全額を益金の額に算入し、その事業年度の貸倒引当金については改めて繰入額を計算して計上するという、いわゆる「毎期全額洗い替え」することになる(会計上も当然洗替法による)。このあたりの手続きは、会計上の取扱いも税法上の取扱いも複雑な部分が多いので、繰入額の計算とともに税理士に相談した上で行わなければならない。


また、企業会計においては、貸倒引当金をかなり厳格に査定して適切に計算しなければならないので、税務上の損金に算入できる繰入限度額を超える金額であっても、「資産査定による見積もりの結果」として、適切な引当金を計上しなければならない点に注意が必要じゃ。この話しは、深掘りすると企業会計と税務会計の話しで読者に混乱が生じるので別の機会に譲るが、税務上の繰入限度額を超過すれば、当然、税務調整で課税所得が増える「有税処理」となることだけ理解しておいてほしい。


4.まとめ

第19回の「貸倒損失」と今回の「貸倒引当金」については、考え方と概要を掴んでおくことが重要じゃ。貸倒関係は、何かと複雑な要素が絡んでいることに加え、決算期の会計手続となるので、実際の処理にあたっては、税理士に相談しながら進めることが肝要じゃ。また、手続きは決算期ではあるが、期中においては、貸倒損失でも説明したように、債務者(相手方)の経営状況等を把握し、期末の処理方針決定と税務調査に耐えうる準備をしておくことに留意しなければならない。





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