会社の会計シリーズ(理解編)第13回:税効果会計の3Column

  vol.0072
ラボン博士
引き続き「税効果会計」の解説を進めていこう。前回は、繰延税金資産の回収可能性について、どのような会社が、どのようにして判断するのかについて整理した上で、「将来減算一時差異」の「スケジューリング」について触れている。今回は、このスケジューリングの説明をしようと思うが、これまでの解説で、損益計算書と貸借対照表を絡めて話しを進めてきたため、説明内容が多岐にわたって、混乱している可能性がある。このため、最初に、用語の捉え方についてもう一度整理した上で、スケジューリングの解説に入ることとする。

1.一時差異について

前回までに、税効果会計というのは、企業会計上の「収益・費用」と税務会計上の「益金・損金」の認識時期が異なるために生じる、会計上の「資産・負債」と、税務上(課税所得上)の「資産・負債」の額の相違を調整する会計手法だということを説明してきた。この会計上の「収益・費用」と、税務上の「益金・損金」の認識時点の相違によって、両者の間に差が生じるわけじゃが、この差のうち、将来解消されるものを「一時差異」と呼び、これが税効果会計の対象となるのじゃ。


一時差異には、「将来減算一時差異」と「将来加算一時差異」の二つがある。そして、この一時差異に対して「永久差異」というのがあって、「交際費の損金不算入額」や「受取配当金の益金不算入額」などが対象となる。永久差異というのは、会計上は「費用または収益」となるものの、税務上は、制度上「永久に損金または益金」として認識されることはないため、税効果会計の対象にはならない(表1)。


(表1)税効果会計の整理

会計と税務の差 一時差異 将来減算一時差異 ⇒ 繰延税金資産に計上
将来加算一時差異 ⇒ 繰延税金負債に計上
永久差異 ※ 税効果会計の対象外

2.将来減算一時差異と将来加算一時差異

将来減算一時差異というのは、課税所得の計算上、「差異が生じたときに加算され、将来解消するときに減算される」という点を押さえておこう。具体的例としては、「貸倒引当金の損金算入限度著超過額」、「賞与引当金」及び「退職給付引当金」の額、「減価償却費の損金算入限度超過額」、「棚卸資産等に係る評価損」などが該当し、回収が見込まれる期の「法定実効税率(注1)」を乗じて繰延税金資産を計上することになる。


一方、将来加算一時差異というのは、課税所得の計算上、差異が生じたときに減算され、将来解消するときに加算される点に注意しよう。剰余金の処分によって積み立てられた租税特別措置法上の諸準備金等が該当し、支払が見込まれる期の法定実効税率を乗じて繰延税金負債を計上することになる。


(注1)法定実効税率の算定方法・・・どのような項目が関係するかを知っておこう。

法定  法人税率×(1+地方法人税+住民税率)+事業税率+事業税標準税率×地方法人特別税率
実効税率= 1+事業税率+事業税標準税率×地方法人特別税率


3.繰延税金資産(又は負債)の具体的算定(例)

法人税申告書の「別表5」の利益積立金額で一時差異に該当する項目が計算の対象となる(法人税の申告書の該当ページを一度見ておくと良い)。一時差異の合計金額に法定実効税率を乗じたものが繰延税金資産(負債)で、期首の繰延税金資産(負債)と期末の繰延税金資産(負債)との差額が損益計算書の「法人税等調整額」となる(表2)。


(表2-1)一時差異の算定(例)

一時差異の項目 期首残高 当期増加額 当期減少額 期末残高
賞与引当金 300,000 350,000 300,000 350,000
未払事業税 200,000 ▲80,000 200,000 ▲80,000
退職給付引当金 600,000 30,000 20,000 610,000
減価償却資産 150,000 50,000 0 200,000
貸倒引当金 100,000 40,000 30,000 110,000
1,350,000 390,000 550,000 1,190,000

(表2-2)表2-1の項目に対応する繰延税金の額

繰り延べた税金 期首残高 当期増加額 当期減少額 期末残高
賞与引当金 90,000 105,000 90,000 105,000
未払事業税 60,000 ▲24,000 60,000 ▲24,000
退職給付引当金 180,000 9,000 6,000 183,000
減価償却資産 45,000 15,000 0 60,000
貸倒引当金 30,000 12,000 9,000 33,000
405,000 117,000 165,000 357,000

(前提)法定実効税率30%で設定


上記により、法人税等調整額は、(表2-2)期首残高405,000-期末残高357,000=48,000となり、損益計算書の法人税等調整額の借方に計上することになる。


4.繰延税資産回収可能性判断に係るスケジューリング

前回、繰延税金資産の回収可能性を判断する際の考え方、検討に当たっての視点、会社の収益力等に着目した例示区分について解説したが、ここで、前回は言葉の紹介に終わった「スケジューリング」について解説する。まず、スケジューリングを含めた、繰延税金資産の回収可能性の判断に至る手順を整理する(表3及び表4)。


(表3)繰延税金資産回収可能性判断の手順

手順 検討項目 判断  
1) スケジューリングの実施
・将来減算一時差異の解消見込スケジューリング
・将来加算一時差異の解消見込スケジューリング
繰延税金資産として計上可能
2) 各項目の解消年度ごとに相殺
・将来減算一時差異と将来加算一時差異の相殺
相殺可能⇒
3) 2)で相殺できなかった場合
解消見込年度を基準とした繰入・戻入及び繰越期間の加算一時差異との相殺
相殺可能⇒
4) 3)で相殺できなかった場合
各項目の解消年度ごとの将来の一時差異等加減算前課税所得の見積額との相殺(これは、タックスプランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得の見積額を含む)
*タックスプランニングについては、本解説シリーズ第12回の表4を参照。
相殺可能⇒
5) 4)で相殺できなかった場合
解消見込年度を基準とした繰入・戻入及び繰越期間の一時差異等加減算前課税所得の見積額との相殺
相殺可能⇒
6) 5)までで相殺できない場合は、繰延税金資産として計上できない

(表4)スケジューリングの例

項目 当期残高 解消年度
2020 2021 2022 2023 2024 2025 2026〜
(課税所得)            
税引前当期利益            
課税所得            
一時差異等加減算前課税            
(一時差異)                
賞与引当金    
未払事業税    
退職引当金                
減価償却資産              
貸倒引当金              

(使用方法)

1)課税所得は、過去5年程度の実績と中・長期計画を根拠として、十分な額が見込めるかが重要な要素となる(本シリーズ第12回参照)。


2)一時差異の各項目について(網掛け部分がスケジューリング可能部分) 賞与引当金、未払事業税は翌期に解消される性質のものじゃ。退職引当金等解消が長期にわたるものは、合理的に見積もることができるものに限るため、別途根拠資料が必要じゃ(例:退職引当は、規程及び年度別個別要支給額のわかるもの。貸倒引当金は、個別引当の場合はスケジューリングが困難なため、法的整理が明らかなもの以外は不可)。


3)年度末に計上する一時差異について、解消見込年度に解消金額を記載し、5年間で解消できないものは2)の根拠資料等で確認できるようにする。また、本シリーズ第12回で説明した「会社の例示区分」で「分類2」であるときは、6年目以降の回収可能額を記入する。「分類3.4.5」であるときは、6年目以降欄に「0」を記入する。


5.まとめ

以上で税効果会計の解説を終了する。税効果会計は、なかなか理解するのが難しいかもしれないが、会社の利益が多くなってくると、毎期末、税金との戦いになることは必至じゃ。節税方法とともに、企業会計と税務会計の違いをある程度把握しておくことは経営者の重要な役目じゃ。しかし、この文中にも記載したが、法人税の申告書などは沢山の付票もあり数十ページを超える様式じゃ。


税務自体が専門的な部分が多いため、どうしても税理士が必要になってくる。顧問税理士を置いて、定期的に自社の経営状態を報告させる仕組みを作っておくと、節税方法や専門用語のレクチャーを受けることもできる。自社に最適な顧問税理士を探したいなら、税理士紹介会社に相談すると良い。業態ごとに最適な人材を紹介してくれるはずじゃ。





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