減損会計の画像

減損会計の2回目となる。今回から、具体的な作業や手続きの内容に入っていこうと思う。前回の内容を見直しながら読み進むと、体系的な理解がしやすいと思うので、全体像がぼやけてきたら、第16回の解説を見直すと良い。

1、資産のグルーピング

前回の説明の中で、減損損失の認識・測定を行う単位として資産をグルーピングすることに触れ、このグループとは、他の資産グループのキャッシュフローから独立したキャッシュフローを生み出す最小の単位であると説明したが、ここでは、このグルーピングの基本的な考え方について整理しておこう。

資産のグルーピングは、管理会計(会社の経営分析のこと)上の区分や、投資の意思決定を行う際の単位などを考慮してグルーピングを行うが、次のような留意すべき点がある。

  1. 収支については、企業の外部との間で直接的に生じるキャッシュフローのほか、「内部振替の価額や共通費の配賦額(注1)」についても、合理的なものであれば含まれること。
  2. 賃貸不動産など、一つの資産において、一棟の建物が複数の単位に分割されて、継続的に収支が把握されている場合であっても、通常はこの一棟の建物についてグルーピングの単位を決める基礎となること。
  3. グルーピングの単位を決する基礎から生じるキャッシュインフローが、製品やサービスの性質、市場などの類似性等によって、他の単位から生じるキャッシュインフローと相互補完的(注2)であり、その単位を切り離したとき、他の単位から生じるキャッシュインフローに大きな影響を及ぼすと考えられる場合には、当該他の単位とグルーピングを行うこと。

(注1-1)内部振替の価額
減損会計においては、基本的には収入と支出の両方を把握できる単位で認識するが、社内において製品工場と営業所の損益を把握するために設けられた価格(社内価格)がある場合、直接的には営業所に帰属するキャッシュインフローを、製造側にも帰属するものとして取り扱うことにしている。

(注1-2)共通費の配賦額
管理会計(経営分析)上、合理性な根拠をもとに各収益部門に配賦している、管理部門(総務、企画、管理、人事労務部門等)の費用をいう。

(注2)相互補完的とは
複数のグルーピングの単位を決定する基礎が生み出す製品やサービスの性質、市場などに類似性があり、それらから生ずるキャッシュインフローが相互に補完的な影響を及ぼしあっている場合をいう。この場合は、補完関係にある複数の単位を一体としてグルーピングすることが適当。

2、資産のグルーピングと遊休固定資産の関係

遊休資産とは、事業目的として使用されず、キャッシュフローを生み出さない遊休状態となっている固定資産を言うのじゃ。このような遊休資産については、将来にわたって使用が見込まれない重要なものについては、他の資産又は資産グループと別の資産グループとして取り扱うこととなっておる。

遊休固定資産は、将来の使用が見込まれないため、使用価値としてはゼロとなり、投資の回収可能額は、「正味売却価額」で行うことになるのじゃ。当該固定資産の時価から処分費用見込額を引いた金額をいうが、市場が形成されていない固定資産の場合は時価がないため、例えば、不動産鑑定士が行う不動産鑑定評価基準に基づく価格、あるいは「固定資産税評価額」、「基準地価」、「路線価」といった、一定の評価額や適切に市場価格を反映していると考えられる指標が用いられることになるのじゃ。

3、減損の兆候とは

この識別にあたっては、通常の事業活動を行う中で実務的に入手できる情報に基づいて、次のような事象の有無について検証することになる。

(表1)「減損に係る会計基準の適用指針(企業会計基準委員会)」における例示

  1. 資産または資産グループが使用されている営業活動から生ずる損益またはキャッシュフローが継続して赤字となっているか、若しくは、継続して赤字となる見込みであること。
  2. 資産又は資産グループの使用されている範囲または方法について、その資産または資産グループの回収可能価額を著しく低下させるような変化が生じたか、または生じる見込みであること。
  3. 資産または資産グループが使用されている事業に関連して、経営環境が著しく悪化したかまたは悪化する見込みであること。
  4. 資産または資産グループの市場価格の下落

3-1、営業活動から生ずる損益またはキャッシュフローが継続してマイナスの場合とは

  1. 営業活動から生ずる損益
  2. 対象資産また資産グループが使用されている営業活動から生ずる損益またはキャッシュフローが、継続してマイナスとなっているか、または、継続してマイナスとなる見込みである場合に関して、「営業活動から生ずる損益」の把握は、その法人が行う「管理会計(経営分析)上の損益区分」に基づいて行われる。

    例えば、ガソリンスタンドを複数店舗運営している会社における管理会計上の損益区分は、基本的には各店舗であり、営業地域ごとなど、損益把握の上で合理性のないグループ化はできない。親子店舗方式を採るなど仕入れや売上といったキャッシュフローに相互補完が認められるような場合は、出店から店舗運営、事業計画と損益管理の実態を踏まえ、一つの資産グループとみることは可能じゃ。

  3. 継続してマイナスとは
  4. 継続」の期間については、概ね過去2年とされるものの、当期の損益見込が明らかにプラスとなる場合は、該当しないと判断するのが適当じゃ。営業活動から生ずる損益またはキャッシュフローによる減損の兆候判断基準のポイントは次のとおりじゃ。

(表2)損益による減損の兆候の判断基準

前々期 前期 当期 減損の兆候判断
マイナス マイナス 減損の兆候あり
マイナス マイナス 当期見込が明らかにプラス 減損の兆候なし
マイナス 当期以降の見込が明らかにマイナス 減損の兆候あり

3-2、使用範囲または方法について、回収可能価額を著しく低下させる変化とは

  1. 事業の廃止や再編成という変化
  2. 対象資産または資産グループが使用されている事業を「廃止」または「再編成」する場合は、一般的には「減損の兆候あり」に該当する。廃止は使用価値がなくなり、再編成についても価値が減少して回収可能価額を著しく低下させることになる変化といえるからじゃ。

  3. 早期の除却や売却によって処分する場合
  4. 法定耐用年数または当初の回収予定年度よりも著しく早い時期に、対象資産または資産グループを処分することは「減損の兆候あり」に該当する。

  5. 用途変更
  6. 当初の事業目的とは異なる用途に転用する場合、対象資産または資産グループの回収可能価額を著しく低下させる変化に該当する場合がある。ただし、単に駐車場として使用していた土地を、賃貸物件を建設して従来よりも回収可能価額を増加させるような場合は、減損の兆候とはならない。

3-3、経営環境の著しい悪化

経営環境の悪化として「減損の兆候あり」とするには、次のような環境悪化が考えられる。

  1. 材料価格の高騰、製品の販売価格やサービス料の大幅な下落、取扱高・量の大幅な減少などが続き、市場環境が著しく悪化している状態。
  2. 技術革新による、製品や商品・サービスの著しい陳腐化、特許期間終了による優位性の喪失など、技術的環境の著しい意悪化。
  3. 重要な法改正、規制緩和・規制強化、重大な法令違反の発生等、法律的環境の著しい悪化。

3-4、市場価格の著しい下落とは

  1. 市場価格が帳簿価額から50%程度下落した場合は、原則として「減損の兆候あり」として扱う。
  2. 市場価格が把握できない場合

固定資産の市場価格が判然せず、客観的に評価するにあたっては、類似資産の直近取引の実勢価格や査定価格、土地の場合の「公示地価」や「路線価」など、一般的に取引価格に近いと言われる数値を用いることが考えられる。これによって、対象資産または資産グループの価格が著しく下落していると判断される場合は、「減損の兆候あり」として扱うことになる。

4、まとめ

かなり実務的な話しになってきたが、理解は進んでいるだろうか?

何度も言うが、会計用語にまどわされることなく、本質的な意味だけを把握することに努めると良い。経営者は、キャッシュフローの見積もりなどの事務的な作業を行うわけではないので、理屈を知ることに専念しよう。そのためのサポート役として税理者はうってつけじゃ。

顧問税理士がいるなら、定期的な面談機会を設けて、自社の経営状況の確認とともに、このような会計用語の話しをするのも効果的じゃ。まだ、税理士契約がないようなら、税理士紹介会社に相談しよう。そのときは、税理士に求める能力と機能を明確にすることを忘れずにな!

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