源泉徴収票の画像

税務調査の際、必ずチェックされる項目の一つに「源泉所得税」がある。支払われるお金の目的によっては、給与課税としての源泉徴収をすべきか否かの判断に迷う場合もあり、取り扱いの間違いが多い税目じゃ。今回は、現物給付や永年勤続者に対する記念品の贈呈、社宅の取扱いなど、源泉徴収の判断基準について解説しよう。

1、通常の給与で間違いの多いケース

源泉徴収は、源泉徴収税額表の月額表に基づき行うことになるが、この表には「甲欄」と「乙欄」があり、「扶養控除等申告書」を提出している者については「甲欄」を、提出していない者については「乙欄」を適用するのじゃ。「甲欄」は税額が低く、「乙欄」は相対的に高くなっておる。調査の方法としては、給与台帳や源泉徴収記録を閲覧し、甲欄適用者の扶養控除等申告書が提出されているについて、個々に確認される。

税額を決定する根拠であるため、扶養控除等申告書がない、若しくは、正しく申告されていない場合は、何らかの処分を受ける可能性があるので、適正に保管するとともに、年末調整の折に記載内容を含めて確認することも必要じゃ。

よく問題になるのが「アルバイト」じゃ。アルバイト料の支払いが「日払い」が「月払い」かの確認から始まる。日払いの場合は、「日額表」を適用して計算しなければならないが、誤って「月額表」を使用しているケースがあり、その場合、源泉徴収額が不足することになるので要注意じゃ。

2、通勤手当

通勤費(交通費)として支給する通勤手当については、非課税枠があり、非課税枠を超過した分は、給与として課税対象になるため源泉徴収義務が生じるので注意が必要じゃ。通勤手当については、電車・バス、マイカー通勤など交通手段によって非課税枠が異なるので、個別に把握しておかなければならない点に留意してほしい。通勤手当の非課税枠は下表のとおりじゃ。

(表1)1カ月当たりの通勤手当の非課税枠(2016年度税制改正後の金額・2016年1月1日~適用)

区分 課税されない金額
1.交通機関又は有料道路を利用している者に支給する通勤手当 1カ月当たりの合理的な運賃等の額(最高限度15万円)
2.自動車や自転車などの交通用具を使用している者に支給する通勤手当 通勤距離が片道55㎞以上 31,600円
〃 45㎞以上55㎞未満 28,000円
〃 35㎞以上45㎞未満 24,400円
〃 25㎞以上35㎞未満 18,700円
〃 15㎞以上25㎞未満 12,900円
〃 10㎞以上15㎞未満 7,100円
〃 2㎞以上10㎞未満 4,200円
〃 2㎞未満 全額課税
3.交通機関を利用している者に対して支給する通勤用敵乗車券 1カ月当たりの合理的な運賃等の額(最高限度15万円)
4.交通機関又は有料道路を利用するほか、交通用具も使用している者に支給する通勤手当や通勤用定期乗車券 1カ月当たりの合理的な運賃等と2の金額との合計額(最高限度15万円)

(注意事項)

  1. 新幹線を利用した通勤も「経済的かつ合理的な方法による金額」に含まれるが、グリーン料金は含まれない。
  2. 最も経済的かつ合理的な経路・方法による通勤手当や定期券などの金額が、1カ月当たり15万円を超える場合には、15万円が非課税限度額となり、これを超える部分は給与課税となる。
  3. この非課税限度額は、パートやアルバイトなどの短期雇用者についても、月を単位として計算する点に注意。

3、現物給付の取扱い

毎月発生する給与や通勤手当以外で、現物支給されたものの中に給与課税の対象となるものがあるケースが多く見られる。この解説シリーズの第2回(交際費)と第10回(福利厚生費)でも触れておるが、これらの費用の中に、役員や従業員の給与とすべきものが紛れておることが多い。したがって、税務調査では、これらの費目については多角的な視点でチェックされるという点に留意しなければならないのじゃ。紛らわしきは「税理士に相談」じゃ。以下、よく指摘されるものについて見ておこう。

3-1、永年勤続者に対する記念品等

永年勤続者に対する記念品等の支給にあたっては、以下の要件を満たしているかを確認する必要がある。
(表2)永年勤続記念品等の非課税要件

1)旅行などの招待費用や記念品の支給であること。
2)その額が「社会通念上相当」であること。
3)受益者の勤続期間が10年以上であること。
4)2回以上表彰する場合は、5年以上の期間をおくこと。
《摘要》
旅行券については、有効期限がなく換金性も高いため、実質的な金銭の給付とみなされ、原則として給与課税される。ただし、以下の要件を満たしていれば、「課税しなくてもよい」とされておる。
ア.旅行の実施が旅行券支給後1年以内であること。
イ.旅行の範囲は、支給した旅行券の額から見て相当であること(海外旅行を含む)。
ウ.旅行券の支給を受けた者がその旅行券を使用して旅行を実施した場合は、所定の報告書に必要事項(旅行した者の住所・氏名、旅行日、行き先、旅行社への支払額等)を記載し、その旅行を確認できる資料を添付して旅行券支給者たる会社に提出していること。
エ.旅行券の支給を受けた者が、支給後1年以内に旅行券の全部または一部を使用しなかった場合は、その使用しなかった旅行券を会社に返還していること。

※このように、かなり細かい要件が定められているので、この要件を満たすだけの資料を準備する必要があることに留意じゃ。

3-2、社宅

役員や従業員に対して社宅等を貸与している場合は、原則として、所定の計算式で計算された賃貸料相当額と、役員や従業員から徴収している賃貸料の額の差額が給与所得として課税されることになるのじゃ。もし、役員や従業員から1円も徴収していなければ、「賃貸料相当額」が給与所得として課税されることになる。この計算式等の詳細については、本解説シリーズ第10回(福利厚生費)に詳しいので、参照してほしい。

3-3、食事代

基本的に、仕事に行かなくても食事は必要なので、会社が食事代を支給した場合は給与課税される。一方で、福利厚生や業務の都合などを勘案したとき、食事の支給を一律課税するのは適当ではないということもあるため、一定の要件を満たす場合は、「食事の支給」について課税しないという取扱いとなっておるのじゃ。その要件は、以下のとおりじゃ。

(表3)食事支給の非課税要件

支給の態様 非課税要件
昼食等を支給 1)役員や従業員が、支給される食事の価額の半分以上を負担していること。
2)次の計算式で計算した金額が、1か月あたり3,500円(税抜)以下であること。
(食事の価額)-(役員や従業員が負担している金額)
※この要件を満たしていない場合は、食事の価額から役員等の負担している金額を控除した残額が給与として課税される。また、3,500円以下であるかは、消費税・地方消費税の額を除いた金額で判定することになる。
《食事の価額とは》
ここでいう食事の価額は、次の金額となる。
ア.弁当などを取り寄せて支給している場合は、業者に支払う金額。
イ.社員食堂などで会社が作った食事を支給している場合は、食事の材料費や著魅了など食事を創るために直接かかった費用の合計額。
残業に伴う食事支給及び宿直手当 残業や宿直によって会社が食事を提供する場合、福利厚生費として損金に算入することができる。なお、食事のほかに、宿直に伴う宿直手当が支給される場合は、事情が変わってくるので注意が必要じゃ。宿直手当については、1回の勤務について4,000円までは課税されないことになっておるが、食事の提供が伴うと、1回の勤務につき、4,000円から支給される食事代を控除した残額について非課税となる点に注意が必要じゃ。
深夜勤務者に対する夜食代 正規の勤務時間が深夜に及ぶ従業員に対して食事の支給が行われる場合も、上記の2項目と同様の取扱いとなるが、夜食の現物支給ができない場合は、1食あたり税抜300円以下の金額の支給であれば、その全額が非課税となるので、おぼえておくと良い。

4、まとめ

月々の給与以外に支給される金銭若しくは現物の支給については、細々とした税法上のルールがあるのじゃが、全てを覚えていることはできないし、毎年行われる税制改正でそのルールが変わることも多い。このような事情もあるため、年に一度は、自社の制度に関係のある税制改正の内容について、税理士に確認する機会を設けることも必要じゃ。

顧問契約を締結するなら、経理指導や税務申告に係る業務以外に、経営面でのアドバイスを受けるための定期的な面談機会を設けたいものじゃ。税理士紹介会社に相談すれば、このように受けたいサービスを事前に調整することが可能じゃから、税理士を探すときは、一度相談してみるとよい。

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