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今回を含め3回にわたって消費税について解説しよう。まず、消費税の仕組みや用語について解説し、消費税体系の概要を把握した上で、税務調査における着目点と適正な処理について説明していくことにする。なお、2019年10月1日より税率が10%に上がるとともに、軽減税率が適用されているが、仕組みの説明においては軽減税率を無視して進めるので留意願いたい。
1、消費税とは
消費税は、「物品の販売」や「サービスの提供」といった様々な事業の売上げに対して課税され、消費税の計算における原則は、売上代金とともに受け取った消費税額から、仕入代金とともに支払った消費税額を差引いて、その事業者が納めるべき税額を算出することになる。以下、取引例を示して納税に至る手続きと仕組みを解説する。
商品が流通する各段階で付加価値が積み上がり、値段とともに消費税の額も上がっていくが、小売業者が品物を販売した時点で、消費者が最終的な消費税負担者となって、品代と消費税を小売業者に支払って消費税の受払いが終わるという流れじゃ。製造業者によって600円で製造された品物は、卸売業者と小売業者の手を経て、商品代金1,000円、消費税は100円となるが、消費税の納付額の計算は、各段階の事業者が消費税課税事業者として、売上に係る仮受消費税から仕入れに係る仮払消費税を差引いた額を納付することになる。仮受消費税から仮払消費税を差引きすることを仕入税額控除という。
なお、消費税は全てが国庫に納まるのではなく、都道府県及び市町村に収納される地方消費税が含まれておる。10%の内訳は、国税としての消費税収7.8%(このうち1.52%は地方交付税として東京都以外の道府県にわたる)、地方消費税2.2%となっているため、最終的に国庫に残るのは6.28%分となる。
2、消費税が課税されない取引
消費税は、全ての取引に課税されるわけではないのじゃ。消費税の課税対象となる取引は、「課税取引」と呼ばれ、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡や貸付け、役務(サービス)の提供が該当するのじゃ。国内取引じゃから、輸出や国外で行われる取引は対象にならないし、このほかにも要件から外れ、「不課税取引」となるものがある。
なお、商品の輸出や免税店での取引は「免税取引」であり、本来消費税はかかる取引だが、税を免除するという扱いであるため、消費税を課税しないのではなく、消費税0%の取引ということになるな。また、国内における取引であっても、消費税の趣旨に馴染まない取引や、政策上の配慮から課税されない「非課税取引」という枠組みもあるのじゃ。以下、それぞれの取引の例を挙げよう。
(表2)不課税取引と非課税取引の主なもの
不課税取引(課税対象外取引) | |
---|---|
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非課税取引 | |
《消費税の趣旨に馴染まない取引》 | 《政策上の配慮で課税されない取引》 |
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3、消費税の世界
(表2)で不課税取引と非課税取引の主なものを挙げたが、同じ消費税がかからない取引ではあっても、不課税取引と非課税取引とでは、消費税の受払いと税率の管理において重要な相違点があるのじゃ。(図1)を使って説明しよう。
消費税の世界を構成しているのは、(a)と(b)であり、(c)の課税対象外取引(不課税取引)は言葉の通り、そもそも消費税の世界の外にある別個のものなのじゃ。この違いを理解することがなぜ重要かというと、次回以降に説明する「課税売上割合」と消費税率の管理に影響するからなのじゃ。端的に言えば、消費税の内か外かというのは、税務上の処理の適否は別として、事業者の経理処理によって決まるのじゃ。この処理を間違えると、消費税データの正常な管理ができず、場合によっては事業者は損をする可能性が出てくるのじゃ。消費税の経理処理を示すと以下のようになる。
(売上側)
借方 | 勘定科目 | 課税区分 | 貸方 |
---|---|---|---|
1,100,000 | 普通預金 | 非課税 | |
売上高 | 課税売上 | 1,000,000 | |
(1)仮受消費税 | 消費税 | 100,000 |
(仕入側)
借方 | 勘定科目 | 課税区分 | 貸方 |
---|---|---|---|
普通預金 | 非課税 | 880,000 | |
800,000 | 経費科目 | 課税仕入 | |
80,000 | (2)仮払消費税 | 消費税(課税口) |
消費税は、このような課税区分ごとのデータを1年間積み上げていき、決算期に納付すべき消費税額と、事業者自らが租税公課として負担すべき消費税額を確定しなければならない。上記の取引だけで納付する消費税を計算すると、売上げ側も仕入側も対象価額に対する消費税率は10%で、税額は、(1)-(2)=20,000円となり、何の問題もない。しかし、これに別の要素が加わると、管理が複雑になり、事業者によっては租税公課として処理する税額が増える可能性が出てくるのじゃ。次回は、この消費税の受払い管理等について解説する。