目次
今回は、法人の節税方法のうち主なものについて紹介しよう。
1、法人税とは
法人は事業年度終了日の翌日から起算して2カ月以内に確定申告書を提出し、その申告書で計算された税額を納めなければならない。税務署(国税)、都道府県(地方税:都道府県民税、事業税)、市町村(地方税:市町村民税)に申告書を提出してそれぞれ税金を納めるのじゃが、ここでは、国税に絞って代表的な節税方法を紹介しよう。
2、役員給与に関する税務上の留意事項
法人税の計算上、「益金と収益」、「費用と損金」の違いを知っておかないと節税には結びつかない。へたをすると税金が増えてしまうこともあるから要注意じゃ。益金と言うのは税法上の収益、損金とは税法上認めてもらえる費用のことじゃ。会計上の収益・費用は税法上の益金・損金とイコールではないということを知っておこう。
法人税の課税所得を算出する手続きの中で、「加算項目」と「減算項目」というのがある。これは申告調整といって、要は、税金の対象とするかしないかを整理する処理じゃが、これが重要なポイントなのじゃ。例えば、役員給与のうち、下記のいずれにも該当しないものは、損金に算入されず課税所得が増えてしまうので要注意じゃ。
《損金算入できる役員給与》
役員給与の態様 | 内 容 |
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定期同額給与 | 支給期間が1か月以下の一定期間ごとで、その事業年度の各支給時期における支給額が同額である給与(従業員の月給と同じ)。毎月同額支払いが要件で、月によって金額が変動するとアウトじゃ。 |
事前確定届出給与 | 所定の時期に確定額を支給するという取り決めに基づき支給する給与。取り決めと言うのは、例えば、6月と12月に各200万円を支払うことにする場合、あらかじめ株主総会や取締役会で決議されていることを言うのじゃ。このような取り決めなしに支払うと損金にならない。 |
利益連動給与 | 利益に関する指標を基礎として算定される給与。これは、有価証券報告書に予めその内容を記載されていないといけないので、大規模上場企業でしかお目にかかれない代物じゃ。いくつもの要件をクリアしなければならないし、一般的ではないので説明は省略する。 |
このように、役員給与は、所定の要件を満たさないと、費用として支払ったのに税金がかかってしまうことがあるのじゃ。これは、節税と言うより、無駄に税金を払わないための基礎知識と言えるな。
3、決算整理時の節税ポイント
次に、税法のルールを活用する例を挙げてみよう。代表的なものを3つ紹介する。
項 目 | 損金算入の為のポイント |
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交際費 | 交際費は、得意先等に対して、接待や贈答などの為に支出した費用じゃ。慶弔費や旅行への招待費用なども該当する。交際費は原則課税じゃが、一定の要件を満たすと、一定額まで損金算入が認められる。また、所定の要件を満たすと、交際費から除外され、一般的な費用として損金算入が認められるから要チェックじゃ。 (1)交際費除外(損金算入)要件 一人当たり5,000円以下の飲食費で、次に掲げる事項を記載した書類を保存しているものについては交際費から除外される。
※真偽が確認できるようになっていることが要件なのじゃな。 (2)交際費の損金算入限度額
→年間800万円以下の部分は、支出した交際費の全額を損金算入。
→支出した交際費の全額が税務上所得に加算される。 ※なお、2014年4月1日以後に開始する事業年度より、交際費の損金算入の取扱いは次の通りとなっている。
→飲食費(社内接待除く)の50%を損金算入。
→飲食費(社内接待除く)の50%を損金算入 |
貸倒引当金 | 貸倒引当金とは、資金の回収が翌期以降に回った売掛金などの売上債権が回収不能となることに備え、予め当期の費用として認識するための引当金じゃ。この処理は、企業会計上は適切な処理なのじゃが、税法上は全額を損金算入できるわけではないのじゃ。相手先別に個別に評価して引き当てるものは「個別貸倒引当金」と言って全額損金不算入となるが、相手先を一括して評価し計上する場合は損金に算入できるのじゃ。この場合、法定繰入率と実績繰入率のどちらかの方法で計算した額となる。
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減価償却資産 | 取得した減価償却資産は、原則として取得年度の一括費用処理はできないが、一定の要件のもとで当年度での損金算入が可能じゃ。
→1台、1基等の取得価額が10万円未満のものは固定資産に計上せず一括費用処理し、損金算入できるのじゃ。
→取得し事業の用に供した減価償却資産で、取得価額が30万円未満のものは、対象となる資産の取得価額の合計額が300万円に達するまでの分は、固定資産に計上せず、費用処理できるのじゃ。現行制度は2020年3月31日までの時限措置じゃ。改正税法は時限立法なので、年度によって内容が変わったり廃止されたりと変動がある。年度ごとに適用の可否を確認することが必要じゃ。 |
4、中小企業倒産防止共済を利用する
中小企業倒産防止共済は、本来は、取引先等が倒産した場合に資金繰りが悪化するなど、自社の経営に影響が出たとき、掛金総額の10倍まで無担保・無保証で無利子の資金を借り入れができる制度じゃが、これが、節税にも利用できるのじゃ。共済掛金の一部若しくは全額を損金計上することができる。前納分を含め年最大240万円、共済期間最大で800万円まで損金計上が可能で、40カ月以上加入していれば解約しても全額返戻されという優れモノじゃ。
しかも決算期末に1年分を一括納付できるため、利益が多く出ることが分かった時点で加入することが可能なため、節税に直結する制度なのじゃ。
5、税制の特別措置等を活用する
【中小企業投資促進税制】
中小企業者等が、1998年6月1日から2019年3月31日までに、新品の機械及び装置等を取得し、国内にある製造業、建設業などの指定事業の用に供した場合、その用に供した日を含む事業年度において、特別償却又は税額控除が認められるという制度じゃ。租税特別措置法による時限措置で、2019年度税制改正において期限が延長され、2021年3月31日までに取得等し、事業の用に供した対象設備に適用されるのじゃ。
【中小企業等の法人税率の特例】
資本金1億円以下の中小企業で、所得金額のうち、年800万円以下の金額に対する法人税の軽減税率を15%(本則は19%)とするもので、これは租税特別措置法による時限措置であり、2019年3月31日をもって措置期限が終了することになっていたが、2019年度税制改正で2021年3月31日まで期限が延長されたのじゃ。
今回は、節税が可能な代表例を紹介したが、細部まで詰めれば、まだまだ節税に有効な制度がいくつもある。これらの説明は、またの機会にしよう。