2020年度税制改正解説シリーズ 3 創設制度と見直し制度その2

目次

今回は、創設制度である「5G導入促進税制」と、前回紹介したもの以外の制度見直しの内容について解説しよう。5Gは特定の事業者のみが注目する制度かもしれないが、将来思わぬ形で一般的な中小事業者にも影響を及ぼすかもしれない。したがって、いまは関係ないからと無視することなく、制度の概要は知っておくべきじゃと思う。

1、5Gとは

最近よく耳にする「5G」に係る税制の創設じゃ。まずは5Gそのものについて説明しておこう。「5G」は、英語だと「5th Generation 」というから、直訳すれば第5世代なので、「第5世代移動通信システム」と呼ばれるスマートフォンなどの通信に用いられる次世代の通信規格のことじゃ。

総務省によれば、通信速度が向上するだけでなく、多数同時接続、超低遅延という特徴をもっていて、現世代の第4世代までが基本的に人と人とのコミュニケーションを行うためのツールとして発展してきたが、5Gは人だけではなくあらゆるモノにもつながる、いわゆるIOT社会における新しいコミュニケーションツールとしての役割が期待されておるそうじゃ。

また、内閣府によれば、「Society5.0」という新たな社会像を提唱しておる。サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムによって、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)を目指すということじゃ。

これまでの社会を、狩猟社会(Society1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society3.0)、情報社会(Society4.0)と位置づけ、これに続く新たな社会を目指すもので、第5期科学技術基本計画において我が国が目指すべき未来社会の姿として提唱されておる。そして、このSociety5.0の実現に不可欠な社会基盤が5Gなのじゃ。どうも、「5」がキーワードのようじゃな。

1-1、5G投資促進税制とは

超高速・大容量通信を実現する全国5G基地局の前倒し整備に係る一定の投資について、税額控除(15%)または特別償却(30%)ができる措置を講じるというものじゃ。安全性・信頼性が確保された5G設備の導入を促す観点から、「特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律」の規定に基づく、認定導入計画に従って導入される一定の5G設備に係る投資について、この税額控除または特別償却ができる措置じゃ。

1-2、管轄省庁の狙いとは?

毎年の税制改正について各省庁から要望が上がる仕組みになっておるのじゃが、この5Gについては、国を挙げたプロジェクトとなっているので、あらゆる省庁が絡んでいる。中小事業者の管轄で言えば経済産業省であり、経済産業省の5Gを促進するための税制面での要望のもととなった考え方は次の通りじゃ。

(表1)経済産業省の税制改正に対する考え方

1)5Gは、自動運転やスマート工場などの産業用途にとどまらず、遠隔医療、防災、地域が抱える社会問題への対応も可能となるような「次世代の基幹インフラ」という位置づけ。このため、サイバーセキュリティなどの、安全性及び信頼性等の確保が極めて重要なテーマとなる。

2)Society5.0の実現に向け、国際連携のもとでの信頼できるベンダー(納入業者)の育成を図りつつ、安全・安心な5G情報通信インフラの早期かつ集中的な整備を行うため、主務大臣の認定に基づき、5G設備に係る投資について、税額控除又は特別償却を認める措置を新たに講じる。

1-3、5G投資促進税制の概要

一定の青色申告法人が、「特定高度情報通信等システム普及の促進に関する法律」の導入計画に基づき、第5世代移動通信システムに関する一定の設備の取得等を行った場合に、前述した「特別償却」又は「税額控除」ができる制度じゃが、この税制の内容を整理すると以下の通りじゃ。

(表2-1)税制措置(国税)

項目 内容
適用対象者と要件 1)青色申告法人
2)一定のシステム導入を行う「特定高度情報通信システムの促進に関する法律」の「認定特定高度情報通信等システム」に該当する法人。
3)対象資産を取得等して、国内の事業の用に供した場合は、その場合。
対象資産とは 特定高度情報通信認定等設備(適用を受けようとする法人の認定導入計画に記載された機械その他の減価償却資産で、一定のシステム導入の用に供するものをいう)。
税制措置(選択適用) 特別償却・・・取得価額×30%
税額控除・・・取得価額×15%(控除の上限額は、法人税額×20%)

 

(表2-2)税制措置(地方税)

項目 内容
適用対象者と要件 「特定高度情報通信システムの促進に関する法律」により認定を受けた「認定特定高度情報通信等システム導入計画」に基づき、電波法の規定によりローカル5G無線局に係る免許を受けた者(ただし、これは地域課題の解決に資すると市区町村長が同意し、総務大臣が認めたものに限るので注意)
対象資産とは 新規で取得した次の減価償却資産
1)「特定高度情報通信システムの促進に関する法律」の規定により主務大臣の確認を受けたもの。
2)取得価額の合計額が3億円以下のもの。
税制措置 取得後3年間、課税標準を価格の2分の1とする。

2、地方拠点強化税制の見直し

まず、地方拠点強化を推進することを目的としたこの税制について整理しておこう。制度の概要と税制上の特例措置の概要は以下の通りじゃ。

2-1、地方拠点強化税制の概要

(表3)地方拠点強化に係る税制上の特例措置

〔事業スキーム〕
国の基本方針に従い⇒都道府県及び市町村が地域再生計画を策定し事業者等に対して公表⇒事業者が「地域再生計画」に基づく「地方活力向上地域等特定業務施設整備計画」を都道府県等に申請⇒都道府県等は内容を審査の上国に認定申請するという流れ。

特例措置の概要
特例措置の項目 内容
特定業務施設の新設又は増設に関する課税の特例(オフィス減税) 認定事業者が特定業務施設の新設又は増設に際して取得等した建物、付属設備及び構築物に係る特別償却又は税額控除を措置
(措置の内容)
特別償却15%、税額控除4%(移転型事業の場合は特別償却25%、税額控除7%)
特定業務施設において従業員を雇用している場合の課税の特例(雇用促進税制) 認定事業者が特定業務施設において新たに雇い入れた従業員等に係る税額控除を措置
(措置の内容)
雇用者増加数一人当たり最大60万円の税額控除(移転型は最大90万円(注1))
(注1)移転型事業の場合に上乗せされる30万円は雇用維持により最大3年間継続。
認定事業者に対する地方税の課税免除または不均一課税に伴う措置 特定業務施設を新設又は増設した認定事業者について、地方公共団体が当該施設に課すべき固定資産税等を減免した場合の減免額に対する地方交付税による補填を措置。
独立行政法人中小企業基盤整備機構による債務保証業務 認定事業者が行う特定業務施設の整備に必要な資金の借入れ等に係る債務を、(独)中小企業基盤整備機構が保証する。
政府系金融機関(日本政策金融公庫)による低利融資制度 認定事業者(中小企業者)の設備・運転の必要な資金を、日本政策金融公庫が低利で融資する。

2-2、当該税制見直しの概要

この税制措置について、東京への人口の過度な集中を是正するために、移転型事業による雇用の増加に対するインセンティブを強化するなど、見直しを行ったうえ、計画の認定期限が2022年3月31日まで延長されたのじゃが、その延長措置の対象は次の通りじゃ。

(表4)今回の税制見直しの概要

1)地方活力向上地域等において特定建物等(オフィスに係る建物等)を取得した場合の特別償却又は税額控除制度(オフィス減税)の適用期限が2年延長される。
2)地方活力向上地域等において、雇用者数が増加した場合の税額控除制度(雇用促進税制)については、要件や税額控除等の見直しが行われ、その適用期限が2年延長される。

3、まとめ

今回の解説のうち、5Gに関しては、今は関連のない事業体であっても、将来的に何らかの影響を受ける可能性があるので概要は掴んでおくと良い。

二つ目の、地方拠点強化税制は、東京一極集中の緩和と地方に活力を与えようという両建ての政策じゃ、これは、大企業ばかりではなく、中小企業においても実現可能性があるので、節税目的でやるようなことではないが、事業体として新たな姿を検討するには良い材料ではないかな。

いずれしても税理士と相談して検討することになるので、税理士との顧問契約がないようなら、早めに税理士紹介会社に相談すると良い。自社の方向性を一緒に検討してくれるような素晴らしい税理士を紹介してくれるぞ!

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