税務調査を意識した会計処理と税理士との付きあい方《減価償却費》

税務調査を意識した会計処理と税理士との付きあい方 第3回《減価償却費》

第3回目は、減価償却費について解説します。減価償却費は、社屋や工場、機械・器具・備品、車両その他の減価償却資産を一定年数にわたって費用化するものですが、対象資産の取得に関することを含め、減価償却という費用の考え方についてご説明します。

目次

減価償却資産

減価償却資産は、会社が保有する固定資産のうち、建物、構築物、機械装置等々、使用することによって、また、時の経過とともに価値が下がっていく資産を言い、税法で定められた使用可能期間(耐用年数)における価値の減少を、費用(減価償却費)として毎事業年度計上するものです。ここで、減価償却費の話しを進める前に、固定資産の範囲を確認しておきましょう。

【固定資産の範囲】

固定資産の種類主な資産
非償却資産(1)土地事業に供している土地(社屋や工場用地)、その他法人所有の土地
(2)土地上に存する権利地上権、賃借権等
(3)電話加入権NTT電話加入権
(4)時の経過により減価しない資産古美術、古文書、出土品等のように歴史的な価値を有し、代替性のないもの1以外の美術品等で1点当たりの価額が100万円以上のもの
(5)事業の用に供されていない資産遊休設備(常時稼働可能な状態に維持補修されているものを除く)建設中の資産貯蔵中の資産
減価償却資産有形減価償却資産建物及びその付属設備(冷暖房設備、照明設備、その他建物に附属する設備)構築物(ドック、橋、岸壁、桟橋、軌道、貯水池、坑道、煙突その他土地に定着する土木設備又は工作物)機械及び装置船舶航空機車両及び運搬具工具、器具及び備品(観賞用、興行の用に供する生物を含むが、後掲の「生物」とは別の扱いなので注意)
無形減価償却資産鉱業権(租鉱権及び採石権その他石を採掘又は採取する権利を含む)漁業権(入漁権を含む)ダム使用権水利権特許権実用新案権意匠権商標権ソフトウエア(他者からの購入か自社作製かを問わない)育成者権営業権専用側線利用権鉄道軌道連絡通行施設利用権電気ガス供給施設利用権熱供給施設利用権水道施設利用権工業用水道施設利用権電気通信施設利用権
生物・牛、馬、豚、綿羊及びやぎ
・柑橘樹、リンゴ樹、ブドウ樹、なし樹、桃樹、桜桃樹、びわ樹、栗樹、梅樹、柿樹、あんず樹、すもも樹、いちじく樹及びパイナップル
・茶樹、オリーブ樹、つばき樹、桑樹、みつまた、アスパラガス等

なお、企業会計上の固定資産は、これらに「投資その他の資産」を含めるますが、税法上は含めない点に留意してください。投資その他の資産とは、企業が利殖を目的に投資した長期資金の性格を有する子会社・関連会社株式やその他有価証券、出資金、長期貸付金、長期前払費用等をいいます。

税務調査時に着目する事項

減価償却資産は、別稿で説明することになる「修繕費」との関連で不適切な処理が多いため、税務調査時のチェックポイントの一つとなっています。これも含めて、税務署が主に着目するのは次のようなものがあります。

【税務調査時に着目される取引と整備しておくべき資料等】

調査事項調査の要領と要整備資料等
減価償却資産の取得価額に含めなければならない「付随費用」が支払手数料として損金計上されていないか?固定資産台帳を閲覧し、現物調査が行われるため、種類や数の多い資産(機械・器具備品等)については、日ごろから定期的に実査しておくことが肝要じゃ。調査に当たって要求される資料は以下の通りじゃ。
・購入時の納品書
・検収確認の証憑
・作業日誌
・見積書、請求書、領収書
・リース契約書(又は割賦購入契約書)
・償却資産申告書(注2)
・固定資産台帳ほか
新規に取得した減価償却資産は、その年度の事業の用に供されているか(事業に供した日はいつか)?
「修繕費」として損金計上した中に、資産として計上すべきものはないか?
リース料として損金に計上しているリース資産で、減価償却資産に該当するものはないか?
特別償却、税額控除を適用した場合、根拠法令に基づく要件を満たしているか?(注1)
耐用年数の適用に当たり、税法上の有形減価償却資産の耐用年数表に定められた分類に従っているか?

(注1)中小企業等には減価償却資産を取得し、所定の要件を満たしたときに特例措置が設けられています。(注2)償却資産申告書:固定資産税の課税対象となる資産は、土地、家屋、償却資産じゃ。この場合の償却資産とは、「構築物」、「機械装置」、「工具・器具・備品」のことです。この償却資産については、申告書を作成して市区町村に提出しなければなりません。前年に申告書を提出していれば、当年度の増・減した償却資産についてのみ申告すれば足ります。なお、無形固定資産や繰延資産は対象外となっています。

中小企業投資促進税制

中小企業投資促進税制は、中小企業者等が機械装置等を導入する際に、取得価額の30%に相当する特別償却または7%の税額控除を選択適用できる税制です。
1998年6月1日から2025年3月31日までの期間(指定期間)内に、要件を満たす中小企業者などが設備投資を行った際に適用されます。
なお、税額控除は、青色申告書を提出している中小企業者(個人事業主または資本金3,000万円以下の法人)、農業協同組合・商店街振興組合等のみが対象です。

中小企業経営強化税制

中小企業経営強化税制とは、中小企業の設備投資を支援するための制度です。160万円以上の機械・装置や30万円以上の器具・備品など、要件を満たす設備を導入して税制優遇措置の適用を受けられると税負担を軽減できます。
設備投資に伴う負担を抑えながら生産性向上や収益力強化を図ることができる制度なので、中小企業の経営者は中小企業経営強化税制をうまく活用したいところです。

税務署が着目する事項に係る注意事項

取得価額に算入すべき付随費用の件

減価償却資産の取得価額には、資産の購入額、付随費用及び事業の用に供するために直接要した費用が含まれる(含まなければならない)。取得価額の算出方法は以下のとおりです。

【取得態様別の取得価額算出方法】

取得の態様取得価額の算出方法
購入した場合購入代金+付随費用+事業の用に供するために直接要した費用
(付随費用:引取り運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税等)
(直接費用:仲介手数料、機械の据付費用、試運転費用等)
自社で建設・製造・製作等した場合建設等原価+事業の用に供するために要した直接費用
(建設等原価:原材料+労務費+経費)
牛馬を成育した場合成育させるために取得した牛馬等の購入代金又は種付費・出産費+成育費用(飼育費+労務費+経費)+成育牛馬等を事業の用に供するために直接要した費用
(直接費用:購入時の例を参考に実情に応じて)
果樹等を成熟させた場合成熟させるために取得した果樹等の購入代金又は種苗費+成熟化費用(肥料費+労務費+経費)+成育牛馬等を事業の用に供するために直接要した費用
(直接費用:購入時の例を参考に実情に応じて)

税務署の調査担当者は、支払手数料などについて、元帳や請求書を閲覧して取得した減価償却資産との関連性をチェックします。調査を受けた時に説明できるようにしておくためには、定期的に税理士にチェックしてもらうなど適正処理に努めることが大切です。

新規取得した資産を事業に供した日

新規に取得した資産が実際に事業の用に供されているかの確認は、主に期末(決算期)近くに取得した資産が対象となります。機械などは、納品日ではなく、実際に機械が使用できるようになったことが要件となるので、試運転等が済み、検収報告書等の証憑によってその日が確認できなければ、当該年度の減価償却費として認めてもらえません。課税所得の抑制や特例税制の適用を狙って、年度末のタイミングで減価償却資産を取得する場合は、事前に税理士に相談して適正な処理をしておくことが重要です。

修繕費として損金計上したものの中に資産として計上すべきものはないか

修繕費と資産の判断を誤って処理してしまい、税務調査で指摘を受けるケースは少なくないでしょう。税法上では、価値の増加をもたらすものは「資産」、通常の維持管理や原状回復のための支出は「修繕費」と区別されています。どちらに該当するかが明らかでないときは、形式的な判断方法として、例えば既往の建物に修繕を加え、その額が一定額(取得価額の10%)を超えると、「資本的支出」と判断されます。

そうなると、修繕費として当該年度の損金で一括処理できず、減価償却資産に回ってしまいます。これは、別稿の「修繕費」の記事で触れますが、このように大きな金額を要する修繕の場合は、見積もりが出た時点で、処理方法等について税理士に相談したほうが賢明です。

リース資産の処理関係

リース資産についてはこちらの記事で解説いたします。

特別償却、税額控除を適用した場合、根拠法令の要件を満たしているか

これは、(注1)で制度概要を示していますが、詳細については税務署のタックスアンサーや経済産業省のサイトで確認できます。実務上、利用の可否や処理方法などの事務処理については、税理士と相談して進めたほうが良いです。

耐用年数表に従って適正な耐用年数となっているか

建物に設置された減価償却資産につき、当該の建物と一体としての資産とするのか、または、器具備品または機械装置として個別の資産とするかによって耐用年数は大きく異なることになります。器具備品などとすれば、建物に比べて耐用年数が短く、単年度に損金に計上できる額が多くなるため、経営者にとっては恣意的に処理したくなるケースでしょう。しかし、減価償却資産で税務上の間違いがあると、修正申告が煩雑になるということに留意しなければなりません。

まとめ

減価償却費の計上にあたっては、資産の計上自体の適正性が調査の対象になるので、取得の際は事前に税理士に相談して、適正な経理処理の流れを把握しておくことが望ましいです。税務調査は、定期的に入る企業については、前回以降の年度について見ることになり、通常は3年程度です。初めて入る場合は、5年程度見ることもありますが、いずれにせよ修正申告を指示されたときに面倒なのが、減価償却資産です。交際費は、たとえ否認されても、その年度の修正申告で済みますが減価償却資産の場合は、指摘された年度が3年前なら、それ以降の申告書も修正しなければなりません。税理士に聞くと詳しく教えてくれるので、一度聞いてみると良いでしょう。

運営・監修者

今井 俊樹

ユーザーが本当に良い選択ができるマッチングサービスを作りたいという思いから、「税理士紹介ラボ」の立ち上げを起案。企業間のアライアンス事業や、WEBサービスの企画・運営を手掛けた経験を基に、依頼者と税理士がwinwinの関係になれるサービスを提供。500名以上の税理士と面談を行い、毎年3000件以上のマッチングを成功させている。

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