貸借対照表の画像

貸借対照表と損益計算書の役割と性質については、「ストック」や「フロー」という表現を使用して概要を説明してきた。今回からは、少し踏み込んだ内容となるが、まずは、企業会計の役割をもう一度整理するところから始めよう。企業会計の目的は、企業の財政状態(貸借対照表)と経営成績(損益計算書)を、出資者等の利害関係者に対して正確に示すことにあるが、まずは貸借対照表について詳しく見ていこう。

1、貸借対照表(バランスシート)

貸借対照表は、これまで説明してきたとおり「資産」、「負債」、「純資産(資本)」の情報を明らかにする財務諸表じゃ。そして、「資産」は将来会社のお金を生み出す(増加させる)要素であり、「負債」は、将来会社にお金の減少をもたらす要素。そして、純資産(資本)は、資産から負債を差引いて求めることまでは理解したと思う。

この貸借対照表についてもう少し細かく見てみるために、それぞれの要素ごとに表示される勘定科目の枠組みを充てると以下のようになっておる。

(表1)貸借対照表(例)

(資産の部) (負債の部)
流動資産
固定資産
有形固定資産
無形固定資産
投資その他の資産

繰延資産

合  計

1,500
1,400
1,000
300
100

100

3000

流動負債
固定負債
500
1,100
(純資産の部)
資本金
資本準備金
連結剰余金

合  計

300
300
800

3,000

この表で注目すべきは、将来のお金の増減を示す「資産」及び「負債」の部において、「流動」と「固定」というワードが使われていることじゃ。これは、そのお金の増減が「生じる期間」に応じて、すなわち資金化できるまでの期間が短いか長いかによって区分されていることを表している。以下、「流動」と「固定」の違いについて説明する。

1-1、資産の分類

流動資産と固定資産の分類には、「正常営業循環基準(注1)」、「一年基準」、「所有目的基準」という3つの基準がある。

正常営業循環基準

資産のうち、企業の主な目的である営業活動の循環過程中にある資産をすべて流動資産とするもので、「現金」、「当座預金」、「普通預金」、「売上債権(受取手形・売掛金)」、「商品・製品・仕掛品」が該当し、これ以外は基本的に「一年基準」の適用を受けることになる。

一年基準

貸借対照表日の翌日から起算して一年以内に現金化または費用化される予定の資産をいい、それ以外の資産を固定資産として分類する基準を言う(なお、ここには有価証券は含まない)。

所有目的基準

これは有価証券に適用される基準で、売買目的有価証券お及び一年内に満期の到来する社債その他の債権を流動資産とし、それ以外のものは固定資産として分類する基準を言う。なお、「売買目的有価証券」等有価証券の詳細については、有価証券の回で解説する。

(注1)正常営業循環

「商品仕入れ・原材料購入」⇒「製品製造等製造活動」⇒「商品・製品の販売活動」⇒「販売代金の回収活動」という一連の取引の流れを正常営業循環と言う。

以上3つの分類基準によって、資産は下表のように分類することができる。

(表2)資産の区分

流動資産
  1. 現金預金(現金、普通預金、当座預金、定期預金等)
  2. 売上債権(受取手形、売掛金、貸倒引当金(マイナス資産)
  3. 有価証券
  4. 棚卸資産(商品、製品、半製品、仕掛品、原材料、貯蔵品)
  5. その他の流動資産(短期貸付金、前渡金、立替金、仮払金、仮払消費税、未収入金、前払費用、未収収益、繰延税金資産等)
固定資産
  1. 有形固定資産
  2. 建物、建物付属設備、構築物、機械及び装置、車両運搬具、器具・備品、土地、建設仮勘定、減価償却累計額(マイナス資産)等

  3. 無形固定資産
  4. 電話加入権、特許権、借地権、水道施設利用権、ソフトウエア、のれん等

  5. 投資その他の資産
  6. 投資有価証券、関連会社株式、出資金、長期貸付金、貸倒引当金(マイナス資産)、繰延税金資産

繰延資産
・創立費、開業費、社債発行費、株式交付費、開発費

1-2、回転率と回転期間

このように、資産は、資金化が早いか遅いかで「流動」と「固定」に分類されるが、資金化(お金として回収)が早いほど経営への貢献度が高いと言える。例えば、同じ流動資産でも「現金」はすぐに使えるが、売掛金は約定日が到来しないと資金化できないし、棚卸資産は、売れなければ資金化できない。このように資金として回収するまでの期間が長ければ長いほど、会社にとっての価値は低くなってしまい、場合によってはリスクを抱えることにつながるということに注意が必要じゃ。

なぜなら、売掛金は、販売先が倒産すると回収できなくなるリスクがあるし、棚卸資産は売れずに倉庫に眠ったままだと、陳腐化や劣化によって資産価値が低下して投下した資金を回収できなくなるかもしれないからじゃ。ここで問題になるのが売掛金と商品の回転期間じゃ。

例えば、売掛金の残高が100万円で、1カ月の売上高が50万円だったとする。1か月の売上高が50万円なのに売掛金が100万円残っているということは、2か月分の売掛金を回収できていないということになる。この場合の売掛金の回転期間(発生から回収まで)は100÷50で2カ月ということになる(これを回転率で表すと、「売上高÷売掛金残高」で、50÷100=0.5)。売掛金が1か月に0.5回転しかしていないということは、1か月分の売上げのもととなる商品を仕入れる資金が足りないと言うことになる。

このように、資産と言うのは、将来の利益を生み出してくれるものである一方、利益を生み出すまでの期間(資金回収期間)が長ければ長いほど、会社にとっては資金繰りの悪化や、売掛先の倒産などのリスクが大きくなってしまうという性質があることに注意しなければならないのじゃ。

1-3、資産の流動化と固定化

会社が将来成長していくためには、積極的に設備投資をして資産を増やす必要があるのも事実じゃが、売掛金や棚卸資産の回転率などの様々な視点で数値を捉え、適切な投資活動につなげることが重要じゃ。

先ほどの売掛金の回転率0.5のように、資金を他の目的に振り向けることができない状態を「資産の固定化」と言い、逆に、自由に使える資金が手元にある状態を「流動化している」と言うのじゃ。業界によって売掛金や商品の回転率の適正水準は異なるが、自社の数値を同業他社の数値と比較したり、その業界の指標と比べたりすることで、状況を把握することが可能じゃ。

2、まとめ

今回解説した事項をまとめると以下の通りとなる。

  1. 資産は流動資産と固定資産に分類される。
  2. 売掛金や棚卸資産などの回転期間は、資金を回収するまでの期間であり、回転期間は小さいほど会社にとって良好な状態である。
  3. 資産の回転率は、一定期間に資金を回収する回数であり、この数値は大きいほど会社にとって良好な状態である。
  4. 売掛金や棚卸資産を含め、会計数字は他社との比較や、過去との比較をすることで、会社にとって意味のある情報を得ることができる。

各種の分析や過去の数字との比較によって、より良い経営を行うための情報を整理することは経営者の重要な役目の一つじゃ。そして、経営者がその役目を果たすために有力なサポート役となれるのが税理士であり、自社の業界に詳しい税理士を確保することで、多角的な視野で経営改善策を練り上げることが可能となるのじゃ。

今後ますます税理士の役割が高まっていくことが想定される中、特定の税理士を確保できていないなら、是非一度、税理士紹介会社の門をたたいてみてはどうかな。

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