収益認識会計基準シリーズ2 5つのステップ その5

収益認識会計基準シリーズ2 5つのステップ その5

今回は、前回途中で終わった解説の続きの変動対価に係る法人税法上の取扱いの続きからになります。内容は変動対価の見積りが認められるための要件についてなので、振り返りながら説明したいと思います。

目次

変動対価に係る法人税法上の取扱い(続き)

法人税法上変動対価の見積りが認められるための要件
  1. 値引き等の事実等の内容および当該値引き等の事実が生ずることにより契約の対価の額から減額または増額する可能性のある金額またはその金額の客観的な算定基準が、その契約若しくは法人の取引慣行若しくは公表した方針等により相手方に明らかにされていること、または、その事業年度終了の日において、内部的に決定されていること。
  2. 過去における実績を基礎とする等、合理的な方法のうち法人が継続して適用している方法により減額若しくは増額の可能性または算定基準の基礎数値が見積もられ、その見積りに基づき変動対価が算定されていること。
  3. 1.を明らかにする書類及び2.の算定の根拠となる書類が保存されていること。

算定基準の根拠が明確であること

上記の要件は、税務上、変動対価の見積もりに恣意性(思い付きや自己都合)が入る可能性を排除する目的で定められていて、課税所得への反映が認められるためには、この要件をすべて満たさなければならなりません。1.の要件についてみると、取引対価の額から減額または増額する可能性のある金額またはその金額の算定基準が、「契約」、「取引慣行」、「公表した方針等」のいずれかによって相手方に明らかにされているか、事業年度の終了の日において内部的に決定されていることが必要です。

リベートやインセンティブ(販売報奨金など)、ペナルティー等においては、取引の相手方に対してその金額の算定基準等が明らかにされていることが多いはずです。例えば、取り決めた期間内の取引数量に応じてリベートの金額が算定される場合や、逆に一定期限までに納入できなかった場合におけるペナルティーの存在などです。

また、「仮の価格」で取引する場合においても、確定価格がどのような方法によって決定されるのかが相手方に明らかにされているはずです(例:一定期間内のある日における為替相場によるなど)。相手方に明らかにされていない場合は、要件を満たすために、事業年度の終了の日までに内部的に決定することも考えられます。この内部的に決定された事実は、3.の書面の保存によって証拠となります。

なお、内部的に決定すると言うのは、いわゆる「機関決定」として行われたことが必要です。例えば取締役会で決定すること、また職務権限に基づいて一定の役職者が決裁することも考えられますが、これらの意思決定が正式に行われたことを書面で保存するというのが3.の趣旨となります。

合理的とされる方法の継続適用

2.の要件は、過去の実績を基礎とする等、合理的な方法により見積もられていることが必要であるとともに、その方法がその法人において継続して適用されていることを求めています。過去の実績を集計管理できるように、管理体制の見直しの要否の検討も必要となります。継続適用を求めるのは、1.と同様に見積りに恣意性が入ることを排除したいためです。

基本的には、過去の実績を基準として「最頻値」または「期待値」のうち最も適切な方法をも用いて合理的に見積もることが求められますが、この要件についても3.の一定の書類の保存が求められることになります。

契約における重要な金融要素

取引価格算定の際に考慮すべき2つ目の要素が「重要な金融の要素」です。契約の当事者が、明示的または目次的に合意した支払時期により、財またはサービスの顧客の移転に係る信用供与(注1)についての重要な便益が顧客または企業に提供される場合は、顧客との契約は重要な金融要素を含んでいるものとされます。

金利調整という考え方

例えば、顧客と約束した販売価格(いわゆる対価)が100円の製品を、20年4月に販売し代金の支払を21年5月に行うが、20年4月で支払えば販売価格が90円となる契約である場合、この差額に後払いによる「金利調整分」の性格があると認められるときで、この差額10円部分が重要であると判断される場合は、重要な金融要素に該当すると考えられます。

この場合の会計処理は取引価格の算定上、金利相当分の影響を調整し、財またはサービスに対して顧客が支払うと見込まれる現金販売価格を反映する金額で収益を認識することになります。したがって、この例に当てはめると販売時点において90円の収益を認識し、10円については「受取利息」を計上することになります。

なお、契約における取引開始日から顧客が支払を行う時点の間が「1年以内」であると見込まれる場合は、金利相当分の調整をしないことができる点にも留意しなければなりません。

(注1)信用供与
信用供与とは、金融やその他ビジネスシーンで広く使われる用語で、文字通りの説明をすれば、他人(相手)を信用して、自己の資金や商品などを一時的に利用させることをいう。相手の返済意思とその能力があることを信じて行う行為であり、具体例としては、銀行や消費者金融などが行うローンなどの融資、クレジットカード会社のクレジットカード(貸与及び取引)、証券会社の信用取引や先物・オプション取引、一般的な商取引における「掛け売買」などが該当する。

このような金利調整を含め、金融要素について考慮すべき事項は次のように整理することができます。

考慮すべき事項
  1. 約束した対価の額と財またサービスの現金販売価格との差額
  2. 約束した財またはサービスを顧客に移転する時点と顧客が支払いを行う時点との間の予想される期間の長さおよび関連する市場金利の金融要素に対する影響

取引対価に重要な金融要素が含まれている場合の法人税法上の取扱い

法人が資産の販売等を行った場合において、次の1.に掲げる額および2.に掲げる事実ならびにその他のこれらに関連するすべての事実および状況を総合的に勘案して、当該資産の販売等に係る契約に金銭の貸付けに準じた取引が含まれていると認められるときは、継続適用を条件として、当該取引にかかる利息相当額を当該資産の販売等に係る収益の額に含めないことができます。

法人税法上の取扱いに含める要素
  1. 資産の販売等に係る契約の対価の額と現金販売価格(資産の販売等と同時にその対価の全額の支払いを受ける場合の価格をいう)との差額。
  2. 資産の販売等に係る目的物の引渡しまたは役務の提供をしてから相手方が当該資産の販売等に係る対価の支払いを行うまでの予想される期間及び市場金利の影響。

この2つの要素を含む関連するすべての事実と状況を総合的に勘案して重要性を判断するという法人税法上の取り扱いは、実質的に「収益認識適用指針」に定められた内容と同様であることから、重要であると判断されるものについて、金利の調整を行う処理を継続適用することで、会計処理と法人税の処理は一致すると考えられます。したがって、継続適用を条件として、会計上の処理が税法上も認容されるということになります。

まとめ

前回に引き続き「変動対価の見積り」についての解説とともに、取引価格算定の際に考慮すべき2つ目の要素である「契約における重要な金融要素」まで進みました。これまでは、一般的な商取引においては「金利調整分」や「信用供与」といった言葉には馴染みがなかったのではないでしょうか。

会計基準や様々な制度を説明するときには普通に使われる言葉ですが、商取引等の実務面では一般的な言葉とはいえないものです。これらの言葉は別として、変動価格に関する取り扱いは、会計上の取扱いと税務上の取扱いに分けて説明をしてきました。もっと具体例をあげての説明は、顧問税理士に依頼すると良いでしょう。個々の会社にとってより実務的な例を示して説明してもらえると思います。顧問税理士がいないようなら、税理士紹介会社に相談すると良いでしょう。業種や業容に応じて最適な税理士を紹介してくれるはずです。

運営・監修者

今井 俊樹

ユーザーが本当に良い選択ができるマッチングサービスを作りたいという思いから、「税理士紹介ラボ」の立ち上げを起案。企業間のアライアンス事業や、WEBサービスの企画・運営を手掛けた経験を基に、依頼者と税理士がwinwinの関係になれるサービスを提供。500名以上の税理士と面談を行い、毎年3000件以上のマッチングを成功させている。

\税理士紹介ラボでキャンペーン実施中!/

JCB商品券10,000円分プレゼント
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次