収益認識会計基準シリーズ第1回《従来の会計基準と新基準》Column

  vol.0082
ラボン博士
さて、今回から新しい会計基準の解説シリーズをスタートする。「収益認識会計基準」という会計基準で、企業会計基準委員会が2018年3月30日に公表しておる。この基準は、2021年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用されるが、2018年4月1日以後に開始する事業年度の期首から適用することも可能じゃ。したがって、すでに前倒しで適用している企業もあるということじゃ。
従来の企業会計基準との違いを踏まえながら、順次解説していくが、難しいからといって諦めてはいかん。この会計基準は、規模の大小を問わず、全ての企業に影響があるからじゃ。では、解説を始めていこう。

1.企業会計原則に基づく従来の収益認識

日本の会計制度では、従来から収益認識に関する包括的な会計基準は検討もされてこなかった。収益認識というのは、端的に言えば収益を財務諸表に記載することをいうのじゃが、何が問題かというと、いつ財務諸表に記載(該当する勘定科目に計上)するのかという点なのじゃ。


企業会計原則においては、「売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売または役務(サービス)の給付によって実現したものに限る(企業会計原則第二損益計算書原則)」とされており、収益の認識は実現主義であると定められている。各企業は、この考え方を踏まえた会計処理を行ってきたのじゃが、「出荷日基準」、「着荷日基準」、「検収日基準」など、企業によって採用する基準が異なっておったのじゃ。


従来の会計基準では、どのような基準日を使用したとしても、それが継続して適用されていれば会計上の問題はないものとされてきた経緯がある。この継続適用は、税法においても同様じゃ。では、これまで許容されてきたこの会計基準が、何のためにいまごろになって変えられるのかとうと、「国際会計基準(IFRS)」への適合が必要となってきたからなのじゃ。


企業活動は、グローバル化が進み、様々な国で事業を展開して財務諸表を作成するのじゃが、国によって違う会計制度を採用しなければならないとすると、非常に不合理であり、正確な財務状態を開示することが困難になる。また、今後は、国際的な比較が必要となることも考慮すると「国際会計基準(IFRS)」の原則を取り入れていくことになる。ちなみに、国際会計基準では2018年1月1日、米国会計基準は2017年12月15日に収益認識会計基準が適用されておる。


2.用語の定義

これから収益認識会計基準の解説を進めるにあたり、使われる用語の定義を知っておく必要がある。収益認識会計基準に定められた用語の定義は次のとおりじゃ。


(表1)用語の定義

用語 定義
契約 契約とは、法的な強制力のある権利及び義務を生じさせる複数の当事者間における取り決めをいう。
顧客 顧客とは、対価と交換に企業の通常の営業活動により生じたアウトプットである財又はサービスを得るために当該企業と契約した当事者をいう。
履行義務 履行義務とは、顧客との契約において、次の(1)又は(2)のいずれかを顧客に移転する約束をいう。 (1)別個の財又はサービス(あるいは別個の財又はサービスの束) (2)一連の別個の財又はサービス(特性が実施的に同じであり、顧客への移転のパターンが同じである複数の財又はサービス)
取引価格 取引価格とは、財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込む対価の額(ただし、第三者の為に回収する額を除く。)をいう。
独立販売価格 独立販売価格とは、財又はサービスを独立して企業が顧客に販売する場合の価格をいう。
契約資産 契約資産とは、企業が顧客に移転した財又はサービスと交換に受け取る対価に対する企業の権利(ただし、債権を除く。)をいう。
契約負債 契約負債とは、財又はサービスを顧客に移転する企業の義務に対して、企業が顧客から対価を受け取ったもの又は対価を受け取る期限が到来しているものをいう。
債権 債権とは、企業が顧客に移転した財又はサービスと交換に受け取る対価に対する企業の権利のうち無条件のもの(すなわち、対価に対する法的な請求権)をいう。
工事契約 工事契約とは、仕事の完成に対して対価が支払われる請負契約のうち、土木、建築、造船や一定の機械装置の製造等、基本的な仕様や作業内容を顧客の指図に基づいて行うものをいう。
受注制作のソフトウエア 受注制作のソフトウエアとは、契約の形式にかかわらず、特定のユーザー向けに制作され、提供されるソフトウエアをいう。
原価回収基準 原価回収基準とは、履行義務を充足する際に発生する費用のうち、回収することが見込まれる費用の金額で収益を認識する方法をいう。

3.収益認識会計基準の適用範囲

収益認識会計基準は、次の(1)~(6)を除き、顧客との契約から生じる収益に関する会計処理(勘定科目に計上すること)及び開示(財務諸表を公表すること)に適用されることになる。

(表2)収益認識会計基準の適用対象外

1)企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」の範囲に含まれる金融商品に係る取引)
※金融商品会計は、このサイトの「会社の会計シリーズ第14回」で解説しているので参照するとよい。
2)企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」の範囲に含まれるリース取引
※リース会計については、このサイトの「税務調査を意識した会計処理と税理士との付きあい方第15回」で解説しているので参照。
3)保険法における定義を満たす保険契約(注1)
4)顧客又は潜在的な顧客への販売を容易にするために行われる同業他社との商品または製品の交換取引(例えば、2つの企業の間で、異なる場所における顧客からの需要を適時に満たすために商品または製品を交換する契約)
5)金融商品の組成または取得に際して受け取る手数料
6)日本公認会計士協会 会計制度委員会報告第15号「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」の対象となる不動産(不動産信託受益権を含む)の譲渡

なお、(表2)のほか、「原価」、「費用」、「損失」に関する会計処理については適用対象外となることに注意じゃ。


(注1)保険法における保険契約の定義(保険法第2条で規定されている)
保険契約、共済契約その他いかなる名称であるかを問わず、当事者の一方が一定の事由が生じたことを条件として財産上の給付(生命保険契約及び傷害疾病定額保険契約にあっては、金銭の支払に限る。以下「保険給付」という。)を行うことを約し、相手方がこれに対して当該一定の事由の発生の可能性に応じたものとして保険料(共済掛金を含む。以下同じ。)を支払うことを約する契約をいう。


4.会計基準の基本的な考え方

収益認識会計基準は、国際会計基準の「顧客との契約から生じる収益(IFRS第15号)」を踏まえた内容となっており、「資産・負債アプローチ」が採られている。


(表3)資産・負債アプローチの考え方

収益は、資産の増加、負債の減少、または両者の組み合わせから生じる。起業が顧客との間で契約を締結すると、顧客から対価を受ける権利と顧客に財又はサービスを提供する日務が生じる。資産と負債が相殺関係になり、純額でみると試算でも負債でもない企業が財又はサービスを提供する義務を履行したときに、その義務が消滅し、契約上の権利だけが残って、それに対応した収益が認識される。


この履行義務の評価は「取引価格」であるため、当初は資産と負債は同額となる。したがって、契約開始時の収益認識はあり得ず、企業が約束した財又はサービスを顧客に移転し、それにより契約における履行義務を充足したときにのみ収益の認識が行われると言う関係にある(履行義務の充足が鍵である)。


5.まとめ

今回から始まった「収益認識会計基準」の導入部分じゃが、どうだったかな?

会計用語が多く出てくるが、言葉に惑わされると理解が進まなくなるので注意が必要じゃ。次回から本格的な内容に入っていくが、会社に顧問税理士がいるなら一度この会計基準についてレクチャーを受けると良い。

会計上は、いま最もホットな話題なので、税理士センセイもかなり勉強しているはずじゃ。顧問税理士がいないようなら、できるだけ早く良い税理士を見つけて顧問契約を結ぶことじゃ。

税理士紹介会社に相談すれば、様々な要望に応じて、自社に最適な税理士を紹介してくれるはずじゃ。





ラボン博士のお役立ちコラム