税務調査を意識した会計処理と税理士との付きあい方 第14回《保険料》Column

vol.0047
ラボン博士
今回のテーマとした「消耗品費」は、減価償却費との関連が深いことを念頭においてほしい。その上で、減価償却費絡みの勘定科目への理解を深めるため、今回の解説とともに、シリーズ第3回(減価償却費)・第4回(修繕費)をあわせて読むことを薦めたい。

1.消耗品費の捉え方

「消耗品費」という勘定科目で処理する費用についてはなんとなくわかるのではないだろうか。問題となるのは、減価償却資産に計上すべきものを、単年度の経費(税務上の損金)である消耗品費で処理している場合じゃ。税務調査では、まさにこの点に着目して調べられるのじゃ。なお、消耗品については、法人税法基本通達で税法上の考え方が示されているので、その趣旨を紹介しておく。


(1)消耗品等についての取扱いを示した法人税法基本通達2-2-15の趣旨

事務用消耗品、作業用消耗品、包装資材、広告宣伝用印刷物、見本品その他これらに準ずる棚卸資産(注1)で、年度ごとに概ね一定数量を取得し、かつ、経常的に消費するものについては、継続的に期末の棚卸計上を省略して、その取得の都度費用化することが認められる。ただし、その費用化した額が製品の製造に係る費用の性質を有する場合は、「製造原価」に算入しなければならない。

(注1)棚卸品の意味

ここで言う「棚卸品」とは、商品在庫ではなく、業務上使用する消耗品を購入してストックしているものであり、このような物品は期末で棚卸を行い、在庫分を貯蔵品(資産)に計上して当該年度の損金(消耗品費)から外すのが税務上の経理原則という意味じゃ。このため、下線部の要件を満たす場合は、税務上の特例として、取得の都度費用化することを認めているという意味じゃ。


2.税務調査を前提としたときの注意事項

消耗品費の原則を理解したところで、税務調査を意識したときに注意すべき点を押さえておこう。チェックポイントは3点あるので、以下、各チェックポイントについて整理する。

2-1 消耗品として処理した中に減価償却資産に計上すべきものはないか

減価償却資産ということになると固定資産じゃが、消耗品という認識で処理するような資産は、当然少額の減価償却資産ということになる。まず、少額の減価償却資産の定義と税法上の特例について整理し、問題となる点にフォーカスする。

固定資産に属する資産であっても、取得価額がごく少額のものまで常に減価償却によって費用化する計算を行うことを強制するとすれば、企業会計における「重要性の原則」(注2)に照らして、必ずしも実情に沿うとは言えない。このため、税法上は、次の資産については、事業の用に供した事業年度において、その取得価額の全額を一時に損金経理することを認めておるのじゃ。

(2)全額損金算入できる少額資産等の範囲

1.使用可能期間が1年未満の減価償却資産
2.1個や1組などの1単位の取得価額(または製作価額)が10万円未満の減価償却資産
※このどちらかの要件に該当すれば、単年度で全額損金経理を認められる。

(注2)重要性の原則

企業会計は、定められた会計処理の方法によって正確な計算を行わなければならないところ、詳細に過ぎる処理を求めると手続きが煩雑となり、「企業の財務内容を明らかにし、企業の状況に関する利害関係者の判断を誤らせないようにする」、という本来の目的を阻害することにつながりかねないため、重要性の乏しいものについては、簡便な方法によることも正規の簿記の原則に従った処理として認められることを言う。

このほか、「一括償却資産の特例」と、「中小企業者等の少額減価償却資産の特例(時限措置)」があるので、(表2)の少額減価償却資産を損金算入できることとの関係を整理しておこう。

(ア)【一括償却資産の特例】

1998年4月1日以後に開始した事業年度より、取得価額20万円未満の減価償却資産については、事業年度ごとに一括して3年間で償却できる方法(一括償却資産の特例)を選択することができる。この制度は、青色申告者に限らず全ての企業が選択することができ、期の途中で取得した資産であっても、月割りせずに事業年度ごとに一括して3年間で均等償却することができる点に特徴がある(この場合の残存価額はゼロとなり、備忘価額も残さない)。

(イ)【中小企業者等の少額減価償却資産の特例】(注3)

青色申告者である中小企業等が、取得価額30万円未満である減価償却資産を、2003年4月1日から2020年3月31日までの間に取得して事業の用に供した場合は、合計300万円に達するまでの分を、その事業年度の損金に算入することができる。これは、取得価額30万円未満の減価償却資産なので、消耗品費で処理するものに限らず、器具・備品、機械・装置等の有形固定資産はもとより、ソフトウエア、特許権等の無形減価償却資産も対象となる点に注目じゃ。


(注3)この特例を受ける資産は、租税特別措置法上の「特別償却」、「税額控除」、「圧縮記帳」との重複適用はできない。また、取得価額が0万円未満のもの又は一括償却資産の損金算入の適用を受けるものについてもこの特例の適用はない点に注意が必要。

以上をまとめると、取得して事業の用に供した減価償却資産について、選択できる税法上の処理方法は以下のとおりとなる。


(表3)減価償却資産を損金算入する選択肢

使用可能期間 取得価額 税務上の取扱い(複数の方法がある場合は、法人が選択できる)
1年以上 30万円以上 ・資産計上して減価償却
20万円以上 30万円未満 ・資産計上して減価償却
10万円以上 20万円未満 ・資産計上して減価償却 ・一括償却(20万円未満の資産を一括して3年間で均等償却)
・全額損金算入(青色申告中小企業者で当該年度300万円を限度)
10万円未満 ・資産計上して減価償却 ・一括償却(20万円未満の資産を一括して3年間で均等償却)
・全額損金算入(少額資産の特例を使用して当該年度で全額損金)
1年未満 10万円未満 ・資産計上して減価償却 ・一括償却(20万円未満の資産を一括して3年間で均等償却)
・全額損金算入(少額資産の特例を使用して当該年度で全額損金)

なお、(イ)の特例を受けるにあたっては、確定申告書等に少額減価償却資産の取得価額に関する明細書を添付して申告することを要するため、実務的には税理士から処理全体に対するアドバイスをもらうか、申告書作成を代行してもらうのが賢明じゃ。


2-2 棚卸しを要する資産について

(1)で記載した、棚卸計上を省略できる消耗品等の要件を具備しない消耗品等は、期末に貯蔵品として資産に計上しなければならない。具体的には、決算見込みで想定以上の利益が出ることがわかったため、年度末に一括して事務用品等の消耗品を大量購入して利益を圧縮するケースが該当する。このような場合は、「年度ごとに概ね一定数量の取得」にはあたらないため、貯蔵品として資産計上し、当該年度の損金に加えてはならないのじゃ。

また、税制特例を悪用するという意味では同じじゃが、より悪質なケースもある。本来は10万円を超える資産を購入しているにもかかわらず、10万円未満の消耗品等を購入したように見せかけるために、取引先に請求書や領収書を分割発行させるようなケースがそうじゃ。

これは、利益操作とともに事実の仮想隠蔽にあたり、「重加算税」の対象となるので要注意じゃ。「重加算税」が課されると、税額の大きさも辛いが、以後、税務当局からのモニターが続くことになるため、このような事態を招かぬよう、日頃から税理士との連携を密にして、適時的確なアドバイスを得ておくことが必要じゃ。


2-3 役員の個人的なものは含まれていないか

このシリーズが始まってから、他の費用科目でも再三チェックポイントとして挙げられるのが、「役員の家事消費」などの利益供与の問題じゃ。消耗備品費についても、30万円未満の資産に係る処理を」するのじゃから、役員宅の調度品等が紛れ込んでいてもおかしくない。税務調査では、元帳、業者からの請求書及び領収書の確認のほか、当然に現物確認が行われるから、胡散臭いことはしないことじゃ。


3 まとめ

減価償却資産との関係で言えば、消耗品費のほか、シリーズ第4回で解説した「修繕費」も重要じゃ。減価償却資産は、他の勘定科目との関連を含め、税制上の判断基準や特例がいくつもあるので、なかなか覚えることは困難じゃ。判断に悩むような取引に直面したときは、税理士を頼ることじゃ。なにかにつけ相談やアドバイスを得る機会を作っておけば、税理士も会社の実情を把握することができるので、双方にメリットがある。税理士との良い関係を築くことも経営者としての重要な務めじゃ。





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