税務調査を意識した会計処理と税理士との付きあい方 第8回《給与-その2「役員給与」》Column

vol.0041
ラボン博士
第7回に続き人件費関係じゃが、今回は、役員給与が「損金不算入」とならないための要件等を中心に解説する。第7回でも触れたが、2006年の税制改正で役員給与の損金算入に関する扱いが見直されておる。この改正では、期中での報酬金額の変更は認められないことになったが、変更した場合は、その事由について根掘り葉掘りと理由の正当性を突き詰める調査が行われるようになっている。このような点も留意しながら、読み進めてもらいたい。

1、役員給与の損金算入の可否

従業員の給与は、問題なく損金算入できる経費じゃが、役員給与を損金に算入するためには、下記のいずれかの形態に該当しなければならないのじゃ。この要件を満たさないと、損金算入することができず、費用として支払ったにもかかわらず課税所得が増えてしまい、「利益減少」で「税金増加」という悲劇に見舞われるので、要注意じゃ。役員給与について決定する際には、税理士にその内容を検証してもらい、税務上の要件を満たすことを確認してから支給することが肝要じゃ。


(表1)損金算入できる役員給与とは?

役員給与の態様 内容
(1)定期同額給与 支給期間が1か月以下の一定期間ごとで、1事業年度内の各支給時期における支給額が同額である給与を言う。毎月同額支払いが要件となり、冒頭で述べたように、月によって金額が変動するものは損金に算入できない。
(2)事前確定届出給与 所定の時期に確定額を支給するという機関決定に基づいて支給する給与。例えば、6月と12月に各400万円を給与として支払うことにする場合、その内容を予め株主総会や取締役会で決議しておくことが要件となる点に注意。
(3)利益連動給与 同族会社に該当しない法人が、業務執行を担う役員に対して、利益に関する指標を基礎として算定し支給するという定めに基づいて支給する給与。有価証券報告書に予めその決定内容が記載されていなければならない形態であり、一般的な企業では馴染みのない支給方式。

2、定期同額給与

2-1定期同額給与の注意点

(表1)で分かる通り、毎月一定額が支払われていれば何の問題もない。例えば、4月~3月の事業年度で、毎月100万円が給与として支払われていれば、要件を満たした役員給与として、法人税の計算上損金算入ができる。また、次のような場合は、「その他これに準ずる給与」という扱いで定期同額給与に該当するので覚えておくと良い。
(表2)定期同額給与に準ずる給与の態様とその内容

会計期間開始の日から3カ月を経過する日までに改定される給与
定期給与の額について、その事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3月を経過する日までに改定された場合における次の給与は定期同額給与に該当する。
〇改定前の各支給時期における支給額が同額である給与。
〇改定以後の各支給時期における支給額が同額である給与。
※改定前3月以内の給与が毎月100万円支給されており、改定後9月間の給与が毎月110万円の同額給与となっている場合は、改定前後の給与をその年度における定期同額給与とするというもの。
経営状況の著しい悪化により改定される給与
会社の経営状況が著しく悪化したこと等により改定が行われた場合で、減額の場合に限り、当該事業年度における改定前の各支給時期における支給額及び改定以後の各支給時期における支給額がそれぞれ同額である定期給与は定期同額給与に該当する。
※改定前に、毎月110万円の支給を受けており、改定後、当該事業年度の残りの月について、毎月80万円の給与支給を受けたような場合が該当。
臨時改定事由により改定される給与
事業年度において、役員の職制上の変更や職務内容の重大な変更等止むを得ない事情によって改定された場合の、その事業年度の改定前毎月支給額及び改定後毎月支給額がそれぞれ同額である定期給与は定期同額給与に該当する。

2-2定期同額給与における税務調査時の注意

定期給与の額を事業年度の途中で改定した場合、(表2)のア~ウを除き、定期同額給与には該当しないことになる。税務調査で否認(定期同額給与ではないと判断)された場合、定期給与の一部または全額が損金不算入となるが、これは、次のように増額と減額で扱いが異なるので注意が必要じゃ。


(表3)改定額増減による損金不算入の扱い


増額の場合 半期の仮決算などで期末の経営成績を見積もり、事業計画以上に利益が出ることが想定されたため、下期から役員給与を増額して支給するような場合は、損金不算入となる。(表2)のアで示したように、会計期間を3月経過後の増額改定は損金算入できない。これは、利益操作に当たり、恣意的に損益を操作することにつながるため認められないのじゃ。この場合、改定後の毎月の支給額が同額であれば、改定前との差額部分のみが損金不算入となる。
減額の場合 減額の場合も、基本的には増額の場合と同様で、会計期間3月経過後の改定は損金不算入となる。この場合、減額後の各月における支給額が同額であるときは、改定前の額のうち改定後支給額との差額部分が当該年度において損金不算入となる点に注意。ただし、経営状況が著しく悪化したことを理由とする場合は、(表2)のイに該当することになり、損金算入が認められる。また、「著しい経営状況の悪化」の判断の為には、疎明資料(資金繰りの悪化を示す資料、経営会議の議事録、その他客観的に評価可能な資料)の整備が必要となるので留意すること。この他にも、期中での役員給与改定には注意すべき事項がいくつかあるので、会計上も税務上も手続きに遺漏の無いよう、税理士と入念に打ち合わせを行うことが肝要じゃ。

3、事前確定届出給与

(表1)の(2)の態様じゃが、役員に対し、所定の時期に確定額を支給するという定めに基づいて支給するものじゃが、次のいずれか早い日までに、所轄の税務署長宛て届出をしなければならない。


3-1「事前確定届出給与に関する届出書」提出期限

ア.役員給与に係る定めに関する決議をする株主総会等の日から1月を経過する日
イ.当該事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から4月を経過する日
※株主総会は事業年度終了後3月以内に開催するため、決議後速やかに(事業年度開始日から4月以内且つ株主総会開催日から1月以内)、所轄税務署長に所定の内容を届け出る必要がある。この日程を念頭に置いて株主総会の開催日を決定することになる。

なお、税務署長宛ての「事前確定届出給与に関する届出書」様式は、国税庁のHPからダウンロードできるが、記載事項は、様式以外に添付書面が必要となるなど多岐にわたるため、事前に様式を確認するとともに、書面の作成自体を税理士に依頼することも検討しておくのが賢明じゃ。


3-2事前確定届出給与の税務調査における注意点

この方式を採った場合、損金に算入できるのは、所定の時期に確定額を支給するという定めに基づいて支給するものに限られる。このため、支給の時期、支給金額は、事前に機関決定をして、税務署長宛て届出をし、実際にその定めどおりに支給された給与に限られるという点を忘れてはならないのじゃ。実際に支給した額が、届出をした額と相違する場合、支給額が届出額よりも増額した額であっても、減額した額であっても、どちらもその全額が損金不算入となる。したがって、「月額でほんの2万円増額して」とか、「支給時期は事情により一月ずらして」、などという処理は、税務上のみならず経営成績にも大きな影響を及ぼすことになるので要注意じゃ。


4、利益連動給与

この給与方式は、一般的には馴染みが薄く、しかも、法人税法で規定する「同族会社」の概念を理解することが前提となるため、混乱をさける意味で、説明は省くことにする。ただ、法人税法第2条10号に規定する「同族会社」はもとより、「非同族の同族会社」であっても、「同族会社」である以上は、利益連動給与を支給して損金の額に算入することはできない(税務上不利)ということだけ、紹介しておく。


5、まとめ

今回は、役員給与について解説してきたが概要はつかめたかの?税務上の損金に算入できる要件を具備しないと、利益が下がり、税金は増えるという理不尽な目に遭うことになる。経理担当者は、税理士と連携を密にして、要件を満たすための手続きと処理に遺漏の無いよう十分な注意が必要じゃ。





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