税務調査を意識した会計処理と税理士との付きあい方 第4回《修繕費》Column

vol.0037
ラボン博士
今回は、前回説明した減価償却費との関連性がある修繕費について解説する。この費目で問題となるのは、修繕の内容によって、当期の経費として一括損金計上できるのか、または、「資本的支出」として固定資産の取得価額に加え、減価償却していくべきものなのかという判断じゃ。そのあたりを中心に解説していこう。

1、資本的支出と修繕費の区分

法人が固定資産を取得して事業の用に供している場合は、その途中で、修理、改良のために様々な費用を支出することになるが、その費用がその固定資産の通常の維持・管理または補修のためのものであるときは、「修繕費」として支出年度の損金計上ができるのじゃ。


一方で、その支出が「資本的支出」に該当する場合は、一括損金として計上することは認められず、その対象となった固定資産の取得価額に加算するか又は、新たな固定資産を取得したものとして減価償却の対象としなければならないのじゃ。なお、「資本的支出」とされた場合は、対象固定資産の取得価額に加算するか新たな固定資産の取得とするかは、その法人が選択することになるのじゃ。


この、固定資産の使用中に支出する費用について、それが修繕費であるか資本的支出であるかを区分しなければならないが、税法では、その基準を以下のように示しておるのじゃ。


(表1)資本的支出・修繕費の区分の基準と対象となる支出の例

資本的支出 修繕費
《固定資産の修理改良のために支出した金額のうち、その固定資産の価値を高め、耐久性を増すことになる部分の金額をいう。》
①その支出によって、固定資産の使用可能期限を延長させる部分に対応する金額
②その支出によって、固定資産の価値を増加させる部分に対応する金額
《固定資産の通常の維持管理のため、または災害等によって毀損した固定資産について、現状を回復するために要した部分の金額をいう。》
①固定資産の通常の維持管理に要した金額
②その固定資産の原状回復に要した金額
資本的支出となる例 修繕費としての損金計上が認められるもの
①避難階段の取り付け等、物理的に付加する費用
②用途変更のための模様替えや改装費用
③機械の部品等を特に高品質・高性能のものに取り替える費用のうち、通常の取替費用を超える部分の金額
④旧資材の使用割合が70%未満の建物の解体移築費用
⑤集中生産、立地条件の改善のための機械等の移設費用
⑥ガスタンクなど、多額の据付費を要する機械設備等の移設費
⑦新規取得した土地又は地盤沈下で評価減した土地の地盛り費用
⑧新たに砂利道、砂利路面を建設するための砂利、砕石等の敷設費用
⑨修繕費かどうか明らかでない災害復旧費用のうち70%の部分
⑩修理・改良費のうち、修繕費の⑪で示した修繕費を超える部分
⑪ソフトウエアの新機能の追加や機能向上のためのプログラム修正費用
①壁などのペンキの塗り替え、破損した瓦の取替え、自動車のタイヤの取替え等の費用
②通常の部品等の取替え費用
③建物の移動費用及び旧資材の70%以上を使用して同一の規模・構造で再建築する建物の解体移築費。
④通常の機械等の移設費
⑤地盤沈下した土地の原状回復のための地盛り費用(但し、次に掲げる場合の地盛りに要した費用を除く。)
イ.土地の取得後直ちに地盛りを行った場合
ロ.土地の利用目的の変更その他土地の効用を著しく増加するための地盛りを行った場合
ハ.地盤沈下により評価損を計上した土地について地盛りを行った場合
⑥使用中の土地の水はけをよくするための砂利、砕石等の敷設費用および砂利道に砂利、砕石等を補充する費用
⑦災害で被害を受けた固定資産の原状回復費用及び被災資産の従前の効用を維持するための補強工事、排水又は土砂崩れの防止などの費用
⑧修繕費かどうか明らかでない災害復旧費用のうち30%の部分
⑨一つの固定資産に係る20万円未満の資本的支出の金額
⑩一つの固定資産について、概ね3年以内ごとにほぼ同金額の修理、改良費を支出するもの
⑪一つの固定資産について、次のいずれかに該当する修理、改良費(明らかに資本的支出となるものを除く)
イ.支出金額が60万円未満
ロ.支出金額が対象資産の取得価額の概ね10%以下
⑫一つの固定資産の修理・改良費のうち、資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでない金額があるときは、支出金額の30%と対象資産の取得価額の10%とのいずれか少ない部分
⑬ソフトウエアの機能障害の除去、現状の効用維持等のためのプログラム修正の費用

2、形式基準による修繕費の判定

資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでない場合、一定の形式基準をもって修繕費とすることが認められておるのじゃ。この形式基準というのは、(表1)でいうと、「修繕費として損金計上が認められるもの」の⑪と⑫じゃ。


⑫の場合は、一つの修理・改良のために要した費用のうち、その法人が継続してその金額の30%相当額と、修理・改良した固定資産の取得価額(前期末取得価額という)の10%相当額とのいずれか少ない金額を修繕費とし、残額を資本的支出として経理しているとき(継続適用)は、その処理が認められるのじゃ。このあたりの要件は、判断に苦しむ部分もあるので、担当者が独断で判断せず、必ず税理士に意見を求めることが肝要じゃ。



3、採決例からみる修繕費と資本的支出

片や、一括損金計上、片や、将来へ向けて分割して損金計上するという取扱いには、形式基準だけでは判断できない部分も出てくるものじゃ。実際、課税庁(税務署等)側の処分に不服があるとして法人側が審査請求し、国税不服審判所長の採決で処分の取消に至ることもあるのじゃ。ある採決の要旨について紹介しておこう。



【採決の背景と概要】

物理的に付加した部分があるとしても、それは価値を高める耐久性を増すための資本的支出というより、補修であり、その本来の機能を回復させるための修繕費であるとして課税処分の一部が取り消されたもの(1998年4月1日~1999年3月31日事業年度の法人税の「更正処分」及び「過少申告加算税」の賦課決定処分につき全部を取り消し、その他の審査請求は棄却)


【採決の要旨】

ガス漏えい対策工事は、過去2回の修繕工事でも改善されなかったために行われた工事であり、本件の漏えい対策工事において、原処分庁(税務署)が主張するように物理的に付加した部分があるとしても、この物理的な付加は、この資産の価値を高め耐久性を増すというより、液化したプロパンガスを安全に出荷するために行った補修であり、出荷ポンプとしての本来の機能を回復するためのものであるから、本件漏えい対策工事費は修繕費に該当し、請求人の経理処理は相当であるから、資本的支出とした原処分は、その全部を取り消すべきである。



これは、工事の性格がその資産の価値を高めるものか否かの判断に関するものであり、(表1)の①で示した「物理的付加」という理由だけでは、資本的支出の要件を満たしたとは言えず、工事の目的や内容にまで踏み込まないと判断できない事例もあるということじゃ。したがって、修繕費と資本的支出の判断にあたっては、画一的な枠にはめ込むのではなく、このような審判請求事案等も参考にして判断することにも留意すべきじゃ。また、工事等に当たっては、「修繕箇所の修繕前の写真」、「修繕に至る経緯を記載した書面」等、後日調査を受けた際の説明材料を整備しておく必要があることに留意じゃ。


4、まとめ

以上のように、修繕費は、一般的にイメージするよりもずっと複雑な要素を含んでいることに気付いたことと思う。法人側の認識と税務署側の認識が異なると、担当税務署への「再調査請求」や、場合によっては上記の例のように国税不服審判所への「審査請求」に至ることもある。修繕費か資本的支出かの判断が迫られるようなケースは、支出する金額が大きいこともあり、似たような支出が比較的短い期間に発生する可能性がある業態の場合は、消費税の取扱い上の問題も含め、経営に影響が出る可能性もある。大きな修繕を行う場合、計画段階で税理士若しくは税務署に、税務上の取扱いについて事前に確認するという手もあるので念頭に置くと良い。





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